教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.4 (中学校版)
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ー 特集未来を拓く授業デザイン〜課題に向かう力を身につける〜教科の視点 音楽山口先生が授業で活用したワークシートの例2山口先生が授業で活用したワークシートの例3 他にも学習を深めるポイントがあって、例えば最後のフェルマータの部分。「なぜ、ここにフェルマータがあるんだろう。」と生徒に問いかけてみると、「尾瀬ヶ原は広いから。」などと考えてくれます。この生徒のリアクションをフックにして、「尾瀬ヶ原の広さをフェルマータで表現するには、直前でしっかりとブレスをして歌わなければなりませんね。」と指導する。ただ単に技術的なことを教えるだけではなく、生徒が技能を習得する際にも考えさせることができます。 私は、生徒の考えを引きだすために、「魔王」を鑑賞する前に朗読劇をしてもらいました。「魔王の役を演じるときには怖く読もう。」、「魔王が子どもに近づくときは怖がられないようにわざと優しく読もう。」のような考えが出てきました。 このページは、【未来を拓ひらく授業デザイン〜課題に向かう力を身につける〜】をテーマに行われた、和田崇先生(令和3年度版『中学音楽 音楽のおくりもの』編集委員)と、中学生のときに和田先生に出会い、教職の道に進んだ山口桃介先生による対談をまとめたものです。 私も長い間、鑑賞教材としてシューベルトの「魔王」を扱ってきました。歌手が4役を歌い分けるということは、歌唱表現がとても豊かでなくてはならないということであり、それを設定する作曲家のすばらしさを聴き取ることが、この教材の醍醐味だと思います。 私は、シューベルトの「魔王」をひととおり学習した後に、『音楽のおくりもの』に掲載されているライヒャルトの「魔王」と比較します。このタイミングで、「実はゲーテはライヒャルトの曲のほうが好きだったんだよ。」と伝えます。ねらいは、生徒がもつシューベルトの「魔王」の評価をひっくり返すということです。こうすることで、生徒が自分の意見をもつきっかけになるのではないかと私は思っています。比較鑑賞をする機会を与えたうえで、最後にどちらの「魔王」が好きか質問するのです。 課題に向かう力を身につけるということは、課題に向かう態度を身につけるということです。これは、学力の3要素と密接に関係があります。❶知識および技能❷思考力・判断力・表現力等❸学びに向かう力等 どうしても❶にフォーカスされることが多いですが、❸❷❶❸というように、それぞれが互いに関連し合っています。 生徒が興味を持つ課題を与え、課題を解くのに適するヒントを用意しておく。生徒は、身につけてきた知識を活用して課題に取り組み、新たな知識の獲得ができると興味が増してきて更に知識を獲得していく。このサイクルがぐるぐると回っていくことで、楽しみつつ学習を深めていくのだと思います。17和田先生山口先生和田先生山口先生和田先生鑑賞領域の例課題に向かう力と学力の3要素

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