教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.4 (中学校版)
18/36

特集の視点教科未来を拓く授業デザイン〜課題に向かう力を身につける〜教科の視点英語ー 溝(ギャップ)当事者の間に情報の授受によって解消しなければならない何らかの「溝」が存在する。非言語的な学習者は課題の内容上の目標を達成し、その成果を示さなければならない。成果言語使用の自由活動に用いる表現・形式に関する制約がない。タスクの要件(引用文献②) この要件のうちの2つめと3つめは、思考・判断・表現を評価するうえでも重要なポイントです。評価の際には、文法や言語形式の使用を限定することなく、目的・場面・状況に応じて課題に取り組ませ、「~することができる」という能力記述文で評価することがふさわしいとされています。後述のとおり、本実践の単元末タスクは言語ではなく内容に焦点を当てており、単元で扱った受動態の使用を 『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語編』に掲げられている育成すべき資質・能力の3つの柱の1つに、「思考力・判断力・表現力等」があります。英語においては、「具体的な課題等を設定し、コミュニケーションを行う目的や場面、状況などに応じて」英語で理解したり、表現したりすることを通して、これらの力を身につけることができるように指導することが求められています。ここで示されている「具体的な課題」を考える際に私たちにヒントを与えてくれるのが「タスク・ベース」の発想です。タスク中心の教授法(Task-based language teaching, 以下TBLT)に関する詳細は本稿では割愛しますが、「思考力、判断力、表現力等」を育成する授業を推し進めていくうえで、タスクは私たちの大きな助けになってくれます。 本稿では、『ONE WORLD English Course 2』のLesson 7 The Gift of Givingにおける筆者の実践例を紹介します。タスクの要素や発想をヒントにして、単元末活動に一工夫を加えました。 Taskを英和辞典で引くと「課題」という語義が載っていますが、TBLTにおけるタスクの意味合いは、下記のように少し狭いものとなっています。必須にしていません。また「オンライン広告」の作成を課し、成果を示すことができるように工夫しました。 本単元の扉ページには、“What can we do to help people in need?”といった、単元全体の内容に関わるBig Questionが掲げられています。単元によっては、これを単元冒頭で生徒に投げかけることで、それ以降の学習を意味づけるような工夫をすることもできます。しかし、本単元はパートを追うごとにこの問いの核心に迫っていく流れになっていると考えたので、あえて明示的な発問はせずに、本文内容を理解していく過程でBig Questionへと自然と思考が促されるように各パートの扱い方を工夫しました。 学校によっては、1パートを2時間かけて進めることもあるかもしれませんが、本校では1パート1時間の進度が基本です。「これでは文法の定着が心配だ」という声を聞くこともありますが、教科書本文にはターゲットとなる文法事項が必ず含まれています。本文を聞いたり、読んだりする中で複数回ふれることができるので、その過程で文法の定着は促せると考えています。また、そうすることで生じた時間を発表活動に費やすことが可能になり、アウトプットを通じた定着を促すこともできます。 各パートの指導手順は、英語授業における基礎基本に忠実な流れをとっています。まず新出文法事項のOral Introductionを行い、Explanationの後に口頭による反復練習をします。次に、教科書本文導入のためのOral Introductionをした後、ListeningまたはReadingを通じた本文理解を促すQ&Aや18学習活動・指導内容(1)概要 本実践における単元計画は以下のとおりです。時間1受動態/教科書本文:Part 12受動態(疑問文)/教科書本文:Part 23助動詞+受動態/教科書本文:Part 3(1)4教科書本文:Part 3(2)5“Plan Your Original Charity Event”導入〜作成6ロイロノート・スクール上で発表・共有はじめに「タスク」とは?実践紹介チャリティーイベントを企画してオンライン広告を作成しよう~「タスク」の要素を授業に~筑波大学附属中学校教諭 高たか杉すぎ 達たつ也や英語

元のページ  ../index.html#18

このブックを見る