特集未来を拓く授業デザイン〜課題に向かう力を身につける〜教科の視点 英語多くの人に参加してもらえるような、魅力的かつインパクトのあるポスターをカード1枚にまとめて作成します。写真や絵を用いても構いません。オンライン広告の特徴を生かして、ポスターに音声を吹き込みます。ポスター紙面に載せるべき情報と音声で伝えるべき情報を整理して、効果的に情報を伝えられるような工夫をしましょう。Explanationをして、音読と再話等の活動を行います。(2)単元末タスクの導入 本単元のBig Questionは、「困っている人をどのように助けられるか」という抽象的な問いだったのですが、生徒はthe Santa Runやアメリカでの心理実験の結果を知ることを通じて、他者を助けることの方法や意義を学ぶことができました。その成果を生かしつつPart 2で扱った題材を踏まえ、「チャリティーイベントの企画立案者として、多くの人に参加してもらえるようなオンライン広告を作ろう」というタスクを単元末に設定しました。 「なぜオンライン広告なの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。タスクを考えるうえで重要な観点の1つに、タスクの“「現実性」(real-worldness)”(引用文献③)があります。数年前に同じタスクを実施しようとしていたら、生徒が紙でポスターを作成し、時間に余裕があれば口頭でプレゼンテーションする形式をとっていたかもしれません。しかし、ICT化が進んだ現代社会で実際に私たちが目にする広告の多くは紙媒体ではなく、スマートフォン等の画面上でのデジタル広告です。また、学校におけるICT化もこの数年で劇的に進んでおり、文部科学省の推進するGIGAスクール構想により、全生徒がICT端末を所持していることから、生徒自身がデジタルでアウトプットすることも容易になりました。授業内のタスクを日常生活にできるだけ近づけることで、生徒がこのスキルを授業外でも生かせるようになると考えています。私たちがオンラインで目にする広告には音声が入っていることも多いことから、今回は以下のように指示をしました。図1 ロイロノート・スクール上での意見共有(4)ポスト・タスク 生徒がICT端末で作成したオンライン広告は、ロイロノート・スクールで図2のように相互共有することができます。図2 オンライン広告の共有 どのオンライン広告も見た目だけでなく内容もすばらしく、現実性が高いものも数多くありました。お互いの成果物を共有する時間には、「これはすごい!」「参加してみたいな」という声が生徒から自然に聞こえてきていました。国語編』(2017)②加藤由崇ほか共著:『コミュニケーション・タスクのアイデアとマテリアル―教室と世界をつなぐ英語授業のために』三修社(2020)③松村昌紀:『タスク・ベースの英語指導―TBLTの理解と実践』大修館書店(2017) こうした自由度の高い活動を行うことに不安感や抵抗感をもたれる先生もいらっしゃるかもしれません。しかし、基礎基本を大切にした日々の授業で培った土台があれば、生徒はそれまでに身につけた知識・技能や自らの発想力を生かしてタスクに取り組み、学校外でも生きる汎用性の高いスキルを修得することが可能になるでしょう。その積み重ねこそが、未来の課題に立ち向かう力を生徒に身につけさせる授業なのではないでしょうか。【引用文献・参考文献】①文部科学省:『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外19ポスター作成音声吹き込み(3)プレ・タスク 企画を立案する最初の一歩として、本校で導入しているオンライン上のプラットフォーム、ロイロノート・スクールで、“Who needs support?”という問いについてのブレインストーミングを図1のように行いました。ブレインストーミングを経てどのような支援が必要なのかを検討したのち、具体的にチャリティーイベントを企画するために、次の5つの視点を与えました:①イベント名、②開催目的、③実施場所、④開催時期、⑤イベントで行うこと。ー最後に
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