共育のツボはしもとしゅうへい27「先生、私走りたくない……」「俺、人前で歌とか歌えないし……」 体育祭や合唱祭といった学校行事を苦手に感じる生徒が、学級には必ずといっていいほど一定数います。そのような生徒も巻き込んで、本当の意味で“クラス全員”で行事を作りあげる難しさに、日々苦労しています。皆さんはどのような工夫をしているでしょうか。 まだ経験の浅い私ですが、ここ数年意識していることがあります。それは、“その行事が好きでない、得意でない生徒の気持ちを全員で共有する”ことです。そのため、行事のスローガンを決める学級会では、まずクラス全員で行事に取り組む意義について説明をしています。そのうえで、生徒にその行事に対する思いをできるだけ本音で発表してもらいます。最初こそは「絶対勝ちたい」「全員本気で」といった言葉が出てきますが、学級会が進むにつれ、「勝つのも大切だけど楽しくやりたい……」「○組らしく仲よく練習したい」などといった、その行事を苦手に感じる生徒の本音も出てくるようになりました。そのうえでスローガンを決定すると、同じ言葉でもクラス全員の思いがこもった、そのクラスらしいスローガンが完成します。 しかし、行事を進めていくにつれ、やはり問題も発生します。「あの子の言い方がきつい」「やる気がない」「ちゃんとやりたい」といったさまざまな声があがります。その時には、行事の放課後練習の時間などを活用し、今のクラスに対して思っていることを共有する時間を設けます。そして、最後にはみんなで決めたスローガンに立ち返るようにしています。すると、前向きに取り組む生徒や、周りを気づかう生徒が少しずつ増えていきます。 このように一つ一つの行事を通して、「それぞれ思いは違うけど、それっておもしろい!」と思える生徒を増やしていくことによって、違いを受け入れ互いに認め合う集団が育っていくと思います。さいたま市立三橋中学校に6年間勤務後、現職。専門教科は国語。部活動は陸上部を担当し、その指導に熱心に取り組む。橋本 柊平埼玉県さいたま市立大久保中学校教諭先生がたがそうであるように、生徒一人一人にも、それぞれの集団で、その子にしかできない役割があるはずです。学校行事を通しての生徒の成長
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