教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.5 (中学校版)
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輝いて生きるための自分デザイン教科の視点 理科②適切な難易度設定:最初は全員で調べる 生徒は、図鑑を渡しただけですぐに使えるようになるわけではありません。検索できたとしても、その方法は合っているのか、検索した候補の中から正しい種へたどり着けたのかなど、自信がもてない状態では観察を続けられません。そこで、次の三つのステップで図鑑を使えるようにしています。<ステップ1:一つの樹木を全員で調べる> 実物を目にしながら図鑑を使って一つの樹木について全員で調べます。ここで検索の観点を確認し、自分で正解にたどり着くことで、図鑑への信頼度を高めます。③結果を共有する:校内植生図の作成 前述したステップ3では、校内植生図の作成に取り組ませます。これは、学年全員で分担して校内の樹木すべてを調べ、図にまとめようというものです。クラスごとに調べる範囲を決め、さらにそれを細分化して班ごとに分担します。授業の時間を使ってその範囲に生えている樹木をすべて記録します。特集図1 樹木の観察で使用したプリント<ステップ3:自分で選んだ樹木を調べる> ステップ2までで、生徒は図鑑の使い方の基礎をマスターしたので、次は、生徒が樹木を選んで調べます。難易度は一気に上がりますが、いろいろな情報を比較しながら推測し、答えにたどり着いたときには大きな達成感を得ることができます。図2 生徒が作成した校内植生図最後にすべての樹木を地図に書き込み、学年の掲示板に貼りだします(図2)。自分が調べた結果が全体に反映されるため、調べる生徒にも張り合いが出ます。指導する側の注意点は、検索の観点を間違えていないか、授業中に回ってチェックしていくことです。常緑樹か落葉樹か、対生か互生かなど、検索の観点を間違えていなければ良しとし、種の判定まではチェックしません。生徒が自分の力で観察し、結論を出すことが重要だと考えているためです。 生徒にとっては、同じように見える樹木を区別できるということが信じられないようで、説明をしてもあまり反応がありません。しかし、実際に図鑑を使って正解にたどり着けることがわかると、一気に興味が高まり、あとは特に指示を出さなくても次々番号を回って調べ始めます。図鑑と実物を見比べながらゆっくり観察する生徒、他の生徒と調べた樹種について議論している生徒など、生徒それぞれのやり方で自分の認識を深めているようすを見ることができました。また、全員で作成した校内植生図を掲示すると、自分の調べた場所やよく通る場所の樹木を確認している生徒の姿を見ることができました。 今回は樹木の観察での事例を紹介しましたが、実験においても①~③と同じような点に注意しながら方法を改善しています。生徒の反応もよく、以前よりも多くの生徒が実験・観察に集中するようになりました。すべての実験・観察で同じような取り組みができるわけではありませんし、準備は大変ですが、引き続き、生徒一人一人に合った実験・観察のスタイルを追求していきたいと思います。15生徒の反応おわりに<ステップ2:特定の樹木を調べる> 樹木に番号を付け、生徒には番号が付いた樹木について調べさせます。こちらで樹木(番号)を指定し、最後に答え合わせをすることで、生徒は自分の観察の正しさを確認することができます。調べる樹種は1時間の授業内では3~4種が限度ですが、番号札は10枚用意し、同じ樹種が複数含まれるようにしています(図1)。生徒を分散させる目的もありますが、先に見た樹木と同じ種類であるということがわかることも必要です。1時間の授業でできるのはここまでです。ー

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