教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.5 (中学校版)
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輝いて生きるための自分デザイン教科の視点道徳ー 特集の視点教科 道徳科の授業における「体験的な活動」については、今やさまざまな提案がされています。研究者によって枠組みが微妙に違っていたり、捉え方が違っていたりするようですが、私としては、インカルケーション(子どもたちにとって必要な道徳的価値を教えこむスタイル)的ではない指導方法には、なんらかの体験的な活動が含まれていると捉えています。道徳が教科になり、文科省も多様な指導方法の取り入れを求めるようになったので、実践がとてもやりやすくなりました。 ただ、いつも引っかかっているのが、道徳科の目標にある「道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」という点です。「気持ちはある」「大切さを理解している」などの心が育つことはもちろん重要なのですが、その心が「行動」に表れてこそ、意味があると考えています。 そこで、ここでは「道徳的実践」につなげる体験的な学びについてご紹介させていただきたいと思います。 どんな体験的学習であろうと、それらを有効にするためには、体験(学習)する集団(学級)がどのような雰囲気であるかは、とても重要な鍵になると考えています。そのためには、道徳科の授業以外でも、「自由に発言ができる」「自分の意見が言える」「仲間の意見を受け入れる」などの温かな集団づくりを心がけています。授業中に、何を言っても何をやっても、お互いに受容し合うことができれば、本音でぶつかり合える授業になりますし、「心」に思っていることを行動に移す抵抗感もなくなります。 『中学道徳3 とびだそう未来へ』(教育出版)に掲載の教材「校長先生の模擬面接」(内容項目:礼儀)での実践を紹介させていただきます。【教材あらすじ】 主人公は高校入試のための面接指導を受けるが、校長先生の模擬面接は教わったとおりには行われなかった。なんとか模擬面接を終えた主人公が家でそのことを話すと、「先生は緊張して混乱したときに対応できるかを試したのではないか」と父から言われる。 本時のねらいは、役割演技によってさまざまな場面での適切な言動を演じることをとおして、礼儀の意義を理解し、主体的に時と場に応じた適切な言動をとろうとする実践意欲と態度を育てることです。授業では、導入・展開・終末のそれぞれで、次のような「工夫」をしました。(1)導入場面での工夫❶「やってみよう」のページの吹き出しの文字を消したワークシートを作り、マナーやエチケットについて個人で自由に考えてもらいます。©新井健太❷❶で考えたマナーやエチケットを班で共有し、班の人数分の場面を選んで演じてもらいました。ここでは全体での発表は行わず、班内で和気あいあいと発表することで、ウォーミングアップもできました。(2)展開での工夫❶まず、校長先生や面接官に、自分ならどのように対応するかを考える場面では、深く考える前に、班内で即興で演じ合ってもらいました。演じる回数が多くなれば、それだけ演じることに慣れたり、抵抗感をなくしたりすることにつながります。20はじめに体験的な学びを充実させる「集団づくり」日常に生きる体験的な学びの実践日常に生きる道徳科での体験的な学びづくり道徳新潟県柏崎市立北条中学校教諭 安あん中なか 美み香か

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