輝いて生きるための自分デザイン教科の視点 道徳❷次に、時と場に応じた適切な言動を判断する別の場面を考えます。指導案に示されている場面、担任が考えた場面、さらに、班ごとに考えた場面を演じるという流れにしました。演じる場面を多くして「体験」する回数が増えれば、日常での具体的な行動につながりやすくなると考えるからです。 ここでは、班内で発表した後に、代表に全体の前で発表してもらう流れにしました。班内で何度も演じてからの「全体」なので、恥ずかしがらずに堂々と発表することができていました。❸今回に限らず、全体への発表を行う授業では、必ず「シェアリング」する時間を設けるようにしています。発表をしたり、他の人の発表を見たりして、よいと感じた「気づき」や、「自分ならこうする」「こうすればもっと相手に気持ちが伝わるのでは」などの多様な意見を共有することで、道徳的価値の捉えを広げたり深めたりしながら、自分や相手にとってのよりよい具体的行動をイメージできるようにします。特集 今回の実践に限らず、ソーシャルスキルやモラルスキルなど、さまざまな場面を演じたり、疑似体験したりする授業では、いろいろなグッズを活用しています。小学生から中学1年生くらいまでなら、恥ずかしがらずに役になりきってくれますが、中学2年生くらいからは、恥ずかしさのほうが先に立ち、体験的な活動がスムーズに進まないことも予想できます。素で演技するよりは、かつらやネームプレートなどを身に付けたり、ペアインタビューなどの活動ではマイクを使用したりして、楽しみながら「体験」できるようにしています。 今回の授業では、下の写真のような、登場人物のネームプレートに加え、役名を自由に書けるネームプレートを使いました。ラミネートをかけておけば「私」は毎回使用できますし、無記名のプレートも、場面に合わせて記名し(ホワイトボード用のマーカーで書く)、何度も使いまわすことが可能です。 ここまで、「道徳的実践」につなげるための体験的な学びづくりについて紹介させていただきました。体験の時間を十分に確保したかったので、「学活」の時間と2時間続きにして行いました。道徳科は授業時数が年間35時間しかなく、教科書もあるなかで「2時間続き」の時間を捻出することは難しいかもしれませんが、生徒の心の中に育っている「気持ち」を実際の行動につなげるためには、トレーニングする時間を十分に確保してあげることが必要だと感じます。 そのためには、複数の教材を総合単元的に扱ったり、他教科や行事との関連を図ったりしながら、より多くの「体験」ができる道徳の授業を構築していく必要があります。私自身、短時間で効率よく「体験」ができるような授業力を身につけなければならないと日々感じておりますが、なによりも、生徒が楽しみにしてくれる授業をつくっていきたいと思います。21グッズ活用で照れくささを軽減おわりに(3)終末での工夫❶本時では「体験」を重視したかったので、中心発問「礼儀にとって大切なことは何か」は終末に位置づけました。これは、「体験すること」と「考えること」を別にすることで、生徒の気持ちを切り替える、更には「体験」をとおして感じたり考えたりした道徳的価値を、自分の中に落としこんだり整理したりする時間の確保をするためです。❷中心発問で各自が考えたことは、全体でもシェアして、他者の考えにも触れたうえで、本時の振り返りを行いました。今回は、ここでもうひと工夫を加え、生徒が振り返りを記入している時間に、即興で担任ともう一度演じる場面を設けました。突然の機会に今日学んだことをしっかりいかせるかどうか、試すことができると考えたからです。 生徒たちは、担任のむちゃ振りにも、即対応するすがたが見られ、自分を指名してほしいと立候補する生徒もいるほどでした。振り返りでは「今回学んだことを早く実践したい」「相手の気持ちになって行動する」「時と場に応じた行動がいつでもできる人になりたい」などと記述していました。ー
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