共育のツボ 学校行事は学級のリーダーを育て、教師と生徒との絆を深めるチャンスです。とはいえ、いきなり生徒を中心に進めようと、すべてを生徒任せにしてはいけません。まずは教師側からしっかりとした方針を示すことが必要です。 以下は、私が実際に生徒に示した合唱コンクールの練習計画(案)です。●朝練習:朝は声が出ない、無理に歌わない〔主な練習内容〕1.前日の録画を見る。2.パート練習ができれば音取りをする。 (できない場合は曲想の確認をする。)●放課後練習:技術練習+ミーティング〔主な練習内容〕1.パート練習(必要に応じて行う。)2.部分練習 (これが中心。課題がある部分を繰り返し練習する。)3.全体合わせ(多くて 2 回。最後は録画する。)4.ミーティング(学活の中で必ず行う。)①パートリーダーから (ソプラノ→アルト→テノール→バスの順)②指揮者・伴奏者から③先生から④実行委員から(まとめと明日の予定の確認。)●反省・予定 練習終了後に今日の反省をし、次の日の予定を立てる。メンバーは、実行委員+(パートリーダー、指揮者・伴奏者などで)残れる人+先生●その他 音楽の授業の後は、実行委員が音楽の先生からアドバイスをいただき、それを放課後練習の前にクラス全員に伝える。 この練習計画(案)を練習期間の前に実行委員に見せ、意見を聞いて修正しながら初日の練習メニューを決めます。そして、この期間の練習は実行委員を中心に行うことをアピールするために、学活で実行委員から学級のみんなに伝えてもらいます。 パート練習は、実行委員と教師が分かれてパートリーきずな全国各地の先生がたのアイデアを詰め込んだ「共育のツボ」。「ともにはぐくむ」をテーマに、子どもたちとの関わり方や学級経営の工夫、先生ならではのお悩みとその解決法など、日々奮闘する先生がたの情報共有の場となるようなページをお届けします。ダーなどと相談しながら練習を進めます。そして、担当のパートを日ごとにローテーションします。 部分練習では、最初は教師が進行して見本を見せます。繰り返し練習する中で、実行委員、パートリーダー、指揮者・伴奏者など、中心となってほしい生徒に技術的なアドバイスを求めましょう。ここで発言させておくと、パート練習で教師がいないときにも発言しやすくなります。慣れてきたら、実行委員に進行を任せます。 練習終了後の反省・予定の中で、意見交流をすることで実行委員と教師が学級全体の練習の状況を共有することができます。また、パートリーダーや指揮者・伴奏者にも参加してもらうことで、具体的な改善策が得られます。そして交流の中で、実行委員2名から始まった輪は、パートリーダー(4名)、指揮者・伴奏者(4名)へと広がります。そして、ここで決めたことを、毎朝、学級のみんなに伝えることで、放課後残ってがんばってくれている実行委員を中心として、メンバーの熱意が徐々に浸透していき学級全体が一つにまとまっていきます。 最初は、教師からのはたらきかけが必要ですが、これを繰り返すことで生徒と教師との絆が深まり、さらに学校行事が生徒中心の活動で円滑に進むようになり、学級のリーダーを育てることがきます。 また、担任不在のときに他の先生に練習をお願いしやすいというメリットも生まれます。26人見 誠ひとみまこと筑紫女学園大学日本語・日本文学科准教授中学校国語科検定教科書「伝え合う言葉」(教育出版)執筆者(共同)。東京都の公立中学校教員を37年間勤めた後、現職。専門教科は国語。学校行事は教師も生徒も成長する場です。制限が緩和された今こそ、学校行事のよさを思う存分味わってください。学校行事を学級づくりに生かそう
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