輝いて生きるための自分デザイン教科の視点 国語ー7特集象徴性が映像に表れているか、映像の作成意図を交流し合う生徒実践のポイント③ 象徴性が伝わるような映像を作成し、課題に迫れているか検討する(5・6時間め)本文の描写に注目して、ワンシーンを演じる生徒描写を検討し、映像化するうえでどの描写がよいかを考えさせました。撮影はペアで行い、なぜその描写に注目したのか話し合いながら撮影する様子が見受けられました。撮影したものを互いに検討し、教科書に立ち返りながら修正を図っていました。少年が最後にタオルを縛り、涙を流す描写に注目をする生徒が多くいましたが、同じ描写であってもタオルのねじり方に違いが表れていたり、表情やしぐさに違いが表れていたりして、生徒の読みの解釈の違いが映像に表れていました。 予備撮影を終えて写真をロイロノートの提出箱に提出させ、タオルが何を象徴しているのかを全体で考えました。提出されたものは、大きく三つに分類されました。 同じ描写であっても、撮影の仕方となぜその描写を選んだのか理由が異なっていました。提出させた写真はワンシーンではありましたが、生徒の発表では「教科書の○○ページにこう書いてあり……。」といったように、複数の描写を結びつけながらタオルの象徴性を映像化していることがわかりました。多くの生徒が、「タオルは祖父を象徴している。」と考えていた中で、③の描写に注目をした生徒が「祖父のタオルが、少年と父親、そして祖父をつないでいる。だからこれは家族の絆を象徴しているのではないか。」と発表しました。最後にタオルを縛るまでの各登場人物の言動を踏まえながら、タオルが単に祖父を象徴しているわけではないかもしれないということに生徒たちは気づかされていました。 4時間めの学びをもとに、再度教科書本文に立ち返らせ、象徴性が伝わるような動画を作成させました。少年の思いが表れるように映像化している生徒もいれば、生前の祖父が漁に出かける姿を見送る少年や父親を厳しく指導する祖父の姿といった本文には書かれていない部分を映像化している生徒もいました。表情やしぐさをはじめ、映像化をすることで書かれていない部分に注目するようになります。 5時間めに撮影した動画を提出させ、6時間めでは象徴に迫れた場面となっているか、課題に迫る工夫が施されているかという観点をもって映像を共有しました。映像だけでなく、なぜこのような映像にしたのか根拠を大切にさせました。 成果として、生徒たちは場面を選択して映像化することを通じて、本文には直接表れていない人物の表情やしぐさなどを考えることができるようになり、作品への解釈を深めることができました。また、何度も協働的に映像を見直すことで場面どうしの結びつきや人物の描かれ方に注目し、場面や人物をどのように捉えたのか叙述をもとに根拠をもって示すことができるようになりました。 一方で課題として、撮影に時間を要してしまったことがあげられます。物語の解釈、撮影、発表、再検討それぞれにかける時間を吟味し授業計画を練る必要があります。また、より作品に対する解釈を深めるために、まずは自分が作成した映像について根拠を明確にする必要があります。その部分が弱くなってしまい、映像作成が先行している生徒もいました。映像化はあくまで手段であり、国語科の資質能力の育成にかなったものでなくてはなりません。❶シライさんが持ってきた祖父の写真 (タオルを額に縛って漁に行く描写)。❷納屋の脇にかけられたタオルを少年が見つめる描写。❸少年がタオルを額に縛り、涙を流す描写。学びを振り返って
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