教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.6 (中学校版)
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「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点社会ー 特集の視点教科10 歴史の学習は、「知識を学ぶ」ことに重きを置いて授業を行っていたり、定期テストでは、知識の量を出題したりしている傾向があるかもしれません。しかし、歴史の学習で大切なことは、学んだ内容のつながりを考え、表現できることだと思います。具体的には一つ一つの事柄について、対話を通じて納得、理解したうえで表現できることなのだと考えます。 本校の社会科では、導入で生徒が抱いた疑問を共有し、生徒と一緒に単元を貫く課題を設定します。その後、予想や学習の見通し、単元の振り返りが充実する「問いの設定」と「一枚式のワークシートの工夫」に重点を置きながら授業を実践することを目ざしています。生徒が教科の本質的な学びを実感し、課題に対する予想や学習の見通しをもって取り組むためには、生徒だけでなく教師も夢中になって活動・調査していける課題の設定が不可欠です。生徒が必然性を感じたり、既習の知識が大きく揺さぶられたりする課題と出合える「学習に対する動機づけの問い」を設定するような工夫が大切だと思います。 その際、中学1年生では小学校との学びを繋げる場面を作ることで、学びを実感できると考えます。 中学校に入学して歴史の学習を行う際、「なぜ歴史を学ぶのか」という問いを立てることから始めます。これは、3年間という長い期間の歴史学習の見通しをもたせるうえで重要なポイントであり、3年生になったときに改めて「なぜ歴史を学ぶのか」を問うことで、歴史に対する考えの変容を感じさせることもできます。また、小学校での歴史学習のまとめにおいて、「なぜ歴史を学ぶのか」という問いを学習してきていることを、中学校の教員が知ったうえで授業を実践していくことは、学びが深まる過程をつくるうえで大切な要素となります。つまり、小学校の学びの「出口」と中学校の歴史の「入口」をつなげるという大切な作業でもあるのです。この学びの履歴をつなげていく授業づくりをしていくこと授業① 導入で使用したワークシートが、生徒が楽しんで自分の言葉で学びを表現する場をつくることにもつながると考えます。【単元の流れ】授業❶「なぜ歴史を学ぶのか」・現代社会の良い面や課題を共有し、過去から学んだ ことや未来に残していくことについて考える。授業❷「歴史人物クロスワードに挑戦!」・小学校で学んだ歴史上の42人の人物名を共有し、 その42人を埋めるクロスワードに挑戦する。授業❸「歴史人物カードゲームに挑戦!」A 歴史の人物を紹介しよう!B 質問してその人物を見破ろう!C 歴史カードバトルにチャレンジ! 歴史カードを使ったゲームはこれまでも多くの実践がありますが(令和3年度版『中学社会 歴史 未来をひらく』教育出版p.6参照)、人物のカード作成を目的にするのではなく、そのカードを使っていかに対話し、自分の言葉で歴史をつなげていくことができるかを目標として実践を行いました。社会科の学びへの取り組み学習の展開について授業実践例「歴史人物ゲーム」小学校の学びをつなげる授業と教材の工夫神奈川県川崎市立麻生中学校教諭 田た川がわ 雄ゆう三ぞう社会

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