教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.6 (中学校版)
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「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点 数学3x=6はどのように考えてつくったのかな?x=2について、等式の性質を使って両辺を3倍してつくりました。特集13等式の性質を使えば、いろんな方程式がつくれそう。(本稿で紹介した授業は、令和5年度の東京理科大学「第16回算数・数学の授業の達人大賞」において「優秀賞」をいただいたものです。)【引用文献】・長崎栄三他(2008).算数・数学教育の目標としての「算数・数学の力」の構造化に関する研究.日本数学教育学会誌第90巻第4号.p.11-21.あ!じゃあ方程式は無限につくれるね!例えば、350000000x=700000000写真 第1時の板書(上)、第2時の板書(下) 第1時では、全国学力・学習状況調査の平成21年度数学A・3(2)の方程式の問題を問題1として提示しました(写真・上)。この問題は正答率が53.5%であり、正答率が低い原因を考え合うことを期待しました。また、分母が同じ方程式のため、数学を苦手とする生徒でも取り組めると考えました。 授業では「そのまんま法」と「せいすう法」という2つの考えが出されました。「そのまんま法でもよい」という考えも見られましたが、「分母の数が違う場合はせいすう法の方がよい」という考えが出されたことから、分母の異なる方程式を問題2として提示しました。「せいすう法」で解く生徒が多く見られましたが、分数のままで解く生徒や、小数に直して解いている生徒も見られました。ただ、整数に直すために両辺に何をかけてよいかを悩んでいる生徒が散見されたため、「なぜ両辺に20をかけるのか」について、全員で考え合う活動を重視しました。 第1時では、特に全国学力・学習状況調査の正答率の低さの原因を考える場面で、すべての生徒が考えることを楽しむ姿が見られたと捉えました。(2)第2時の授業の構想とその様子 第2時は「ルーブリック」の②~④の段階の達成を目ざし、本時の目標を「どのような方程式も係数や定数項を整数にすることで効率よく解くことができることを実感するとともに、方程式の解き方を振り返り、解が2の方程式を自ら進んでつくることができる」と設定しました。( )を含む方程式や小数、分数を含む方程式の学習を踏まえ、はじめに「これまでの方程式を発展させるなら?」と問い、「分数や小数が混じった方程式」という考えを引き出す文脈で問題1を提示しました(写真・下)。この方程式は第1時の問題2の右辺を小数にしたもので、解が同じになる方程式を見いだすことをねらいとしました。 授業では「小数にそろえてから両辺100倍して解く」「分数にそろえてから両辺20倍して解く」「両辺を100倍して解く」という3つの考えについて説明し合いました。その後、3つの考えに共通することを見いだす中で、「タイムパフォーマンスを意識している(タイパ法)」という考えが出されました。本時の授業タイトルとして「タイパ法がよい」と合意形成がなされるなど、学びを統合、体系化することができたと捉えました。 この活動の後に、前時の問題2と本時の問題1の解が同値の方程式であることを確認しました。解が同じ方程式の存在に気づいたタイミングで、「解が2になる方程式をつくろう」という問題2を提示しました。2分ほどの個人思考の時間をとったあと、生徒と次のようなやり取りをしました。 このように同じ解を持つ方程式をつくる方法をみんなで確認したことで、すべての生徒が意欲的に問題をつくることに取り組めていました。ここでは、「〇〇くんでも解けない問題をつくろう」という姿が見られ、特に数学の得意な生徒も含め全員が考えることを楽しんでいるようでした。 「ルーブリック」を用いたことで、生徒の姿を具体的に把握し、目ざすべき生徒の姿を明確にしたうえで授業を展開できるため、すべての生徒が「考えることを楽しめる授業」に近づけることができたのではないでしょうか。最後に、「考えることを楽しめる授業」を実現するためには、「ルーブリック」を用いることに加え「安心して意見を出し合うことができる」という教室文化が何より重要であると考えています。おわりにー

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