教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.6 (中学校版)
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「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点理科ー 特集の視点教科14 「自然の事象の中から問題を見いだし」というフレーズをよく耳にします。しかし、生徒たちが、自分の観みたものに対して疑問を抱くことは容易ではありません。なぜなら、生徒たちは、観たものこそが、至極、当たり前のことと捉えているからです。教師は、生徒たちにちょっとした投げかけを行って、生徒たちが疑問を見いだすきっかけをつくる役割を担います。では、教師が投げかける問いとは・・・。その問いを見つけることも容易ではありません。私は、授業の中で生徒たちの疑問を引きだす「よい問い」を探しています。先生方も同じではないでしょうか。本稿は、「光の性質」の授業で私が生徒たちに投げかける問いを示しながら、生徒たちが主体的・対話的に考える場面づくりを紹介させていただければと思います。 授業で投げかける問いはさまざまあります。私が探す「問い」の条件は、生徒たちが既に学習して獲得した知識を活用し、考えることができる問いです。 例えば、「図1の位置Xにスクリーンを置くと、スクリーン上にはどのようなものが映るか?」と投げかけます。作図で位置Pに像が描ける生徒も、あるいは位置Pの像を実際に観た生徒も、そして像をまだ観ていない生徒も反応はあまり変わりません。生徒たちからは「逆さなものが映る」や「像ができている」などの答えが返ってきます。図1 凸レンズを通る光の道すじ 「では、図1の3つの線は、そもそも何を表しているの?」と問いかけると反応はありません。この写真は実物にろうそくを用いて、すりガラスのスクリーン上の様子を撮影したもの写真左:スクリーン上に像ができている様子写真右:スクリーン上に像ができていない様子 もう1つ、浮き上がり現象の事例を紹介します。「図2の硬貨から出た光は、水面で屈折して観察者の目に届きます。観察者は目に入った光を認識して硬貨が見えます。しかし、ヒトの目は光が折れ曲段階で生徒たちが獲得している知識は、3つの線の描き方(作図の手法)までで、作図が“意味するもの”の理解は十分ではありません。そこで次のような補足をします。「図1の線は、実物の先端から出た光のうち、3つの光の道すじを表していた。それぞれの線は実物の先端の光だね。」ここでハッと気づく生徒が現れます。「実物の先端がスクリーンの3箇所に映る!」このとき、生徒の頭の中で作図が表す意味と現象が結びつきます。さらに私が「実物の先端はあらゆる向きに光を出しています。3つの光以外にもたくさんの光が凸レンズを通ってスクリーンに届きます。位置Xのスクリーンに実物の先端から出たたくさんの光が届くとき、スクリーン上にはどのような様子が映っているの?」と続けます。その後は、生徒たちで話し合いながら、スクリーン上の様子を活発に議論したり、考えたりする場面がみられます。そして、実際に、位置Xにスクリーンを置いてスクリーン上に現れた様子や、スクリーンを動かしてスクリーン上の様子の変化を熱心に観察する姿がみられます。 図1の位置Pにスクリーンを置くと、像ができることは学習します。しかし、位置Xのような像ができない条件を考えることで、像ができる位置Pがどのような条件かより強調して理解でき、生徒たちに印象づけられます。生徒たちから「スクリーンを動かしてピントがあったところが位置Pなんだ」と声があがるときが、理解してくれたと感じる瞬間です。はじめに私が探す「問い」の条件と事例の紹介「考える時間」を楽しむ授業デザイン広島大学附属福山中・高等学校教諭 岡おか本もと 英えい治じ理科

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