ともにはぐくむ共育のツボ 私が小中学生だった頃の担任の先生がたとの思い出を少しだけご紹介します。 小学1年生の時は沖縄県出身で笑顔の素敵なN先生が担任でした。「みんなと食べようと思って沖縄から持ってきたよ」と、夏休み明けに私たち一人一人に渡してくださったのは15cmほどにカットされたサトウキビ。生まれて初めてサトウキビを手にしたうれしさと、かめばかむほど優しい甘さが口に広がる感覚は、今でもしっかり記憶に残っています。 小学2年生の時の担任はK先生。ダンスや音楽に精通しているエネルギッシュな先生でした。休み時間にエアロビクスのビデオをかけ、「ダイエットだね」と一緒に踊ったことも楽しい思い出です。それから二十数年が経ち、先生とは、私が日本音楽の授業の教材研究のために訪問した“長唄囃子のお稽古場”という思いがけない場所で再会を果たすことに。日本舞踊の研鑽を長く積まれていることは耳にしていましたが、鼓の修練に励む先生の姿に心を打たれ、再会の喜びがいっそう深いものとなりました。 中学1年生の時の担任は数学のM先生。少し怖い雰囲気だけど、実は優しくて、生まれたばかりのお子さんの話をよくしてくれる家族思いの先生でした。掃除の時間、なんの気なしに教室の隅を掃いていた私に「隅っこを掃くときは、ほうきをこう使うんだよ」と壁に対して垂直にほうきを当て、お手本を示してくださいました。短いやりとりでしたが、このシーンをよく思い出しながら私も清掃指導をしてきました。 中学2年生の時の担任だった国語のY先生は、熱い先生。「本気でバカになれ」と、なにごとも思いきり取り組むよう、行事のたびに私たちを盛りあげてくださいました。先生との思い出はこの年に限ったものだけではあけんさん全国各地の先生がたのアイデアを詰め込んだ「共育のツボ」。「ともにはぐくむ」をテーマに、子どもたちとの関わり方や学級経営の工夫、先生ならではのお悩みとその解決法など、日々奮闘する先生がたの情報共有の場となるようなページをお届けします。りません。3年生の時には文化祭が廃止となり、さまざまな発表をする場がなくなり落ち込む私たちの気持ちをくみ取って、バンド演奏を中心とした有志発表の場を作ってくださいました。当日はコンサートだけでなく地域のかたがたのバザーも行い、多くの来場者に楽しんでいただくことができました。中学校の思い出の中でも特別な一日です。 中学3年生の時の担任は英語の先生で、「洋楽を和訳する」という夏休みに出された課題が印象に残っています。英語の知識が増えてきたこの時期は、洋楽に興味をもつ頃でもありました。先生は洋楽のロックが好きで、そんな先生との音楽談義は、中学3年生の私たちにとって刺激的でとても興味深いものでした。 これまで出会ったたくさんの先生がたのご指導があったからこそ、教師としての私がありました。時代の流れに伴って、教育手法や指導技術は今後もさまざまな変化を遂げていくことと思います。しかし、子どもたちとのなにげない関わりの一瞬一瞬を積み重ねていくことが、今も昔も変わらずに、学校現場には大切なことなのだと思います。26こうして振り返ってみると、初心に返る思いです。お世話になったすべての先生がたへの、感謝の気持ちを新たにしています。一瞬一瞬を大切に板橋 薫いたばしかおる宮城教育大学附属中学校教諭武蔵野音楽大学を卒業した後、音楽科教諭として宮城県内公立中学校を経て宮城教育大学附属中学校に勤務。令和3年度から同校で研究主任を3年間務める。
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