教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.6 (中学校版)
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学びを「自分ごと」として捉えることの大切さ2828門の教科の先生がいらっしゃるので、それらを越えて1人の担当者がカリキュラムマネジメントをするというのは、先生がたにとってはけっこうハードルが高いなと思います。 今までは受験のための学びを一生懸命指導してきたけれども、SDGsの時代を迎えてみると、それだけでは間に合わない現実があるなということについて共通の認識をもつことが必要です。どうすれば今までの学びを超えることができるのか、という問題意識が生まれたときに初めてその先に向かうことができるんだと思います。 教科を越えた学びの重要性が認識できたら、あとは1人に任せるわけにはいかないということが共有できるはずです。各学年団でどういう学びのつながりをつくっていけるのかということをよく話し合うことが必要です。そして全部最初からつくるんじゃなくていいから、この単元については一緒につくってみようかというように、小さなつながりを生かして始めてみることが大事だと思います。 最初は国語ではこんなことをやっていた、社会でも同じことやっているじゃないか、SDGsでつながっているね、などとお互いにつながりが見えてくる。そこで、そっちでやっているんだったらその続きをここで生かそうよ、というようなことがいえるんじゃないかと思います。 まず、考える時間を「楽しむ」ということはとても大事だと思います。人から言われたことだけを追究していたのでは、そこに楽しみなんかないじゃないですか。だからまずは自分の問題だと感じる、問題意識を共有することが大切です。自分の問題と感じていれば、わかったときにうれしくてしょうがない、友達からいいヒントをもらったらそれがうれしいとか楽しいとか、学びの質が変わってくると思うんです。 今回の教育出版の教科書は、どの教科においてもSDGsという視点をとても重視しています。いわばSDGs時代の教科書が示されたというわけです。つまり、さっき言ったような知識を詰め込むだけの教育から、お互いに答えを求めて協力し合い、学び合い、交流し合うような学びのきっかけも示されています。それは学びを楽しむことにつながります。またこの教科書では、SDGs時代の学びの仕方、あるいは学びの内容をわかりやすく提示しています。そういう意味で、この教科書はとても価値があるなと私は思っています。 もちろんたくさんありますが、いちばん大事なのは、教育出版の教科書には、「未来への窓」というコンセプトの下、全教科全領域において「SDGs時代の学びの教科書」を作るんだ、という大きな方針があることです。そしてそれが各教科書の中にいろいろな形で具体化されています。 例としては、国語で「持続可能な未来を創るために」という単元が全学年に位置づけられています。ここでは中学3年間でSDGsの理念に向かってどのように学んでいったらいいのか、それがどういった意味で大切なのかということが明確に伝えられています。1年生の「始めの問い」で地球規模の課題を3つあげさせてから、末吉里花さんの「エシカルに生きよう」という教材を読みます。「最後の問い」では「なぜ、人間だけがゴミを出すのでしょうか」と問いかけられます。そこには人間が捨てた漁網の中で、もがくウミガメの写真が載っているんですよね。そういう具体的な例をあげながら子どもたちに私たち人間の生き方を問い、話し合い、学び合いが進むような示し方をしていますね。これはすばらしいなと思いました。3年生の「最後の問い」では「あなたは、未来に何を残したいですか」という言葉と、月から見た地球の写真が掲載されていて、地球に住んでいる1人として、あなたはどんな生き方をしていきますか、と問いかけられます。こうした、生き方を問いかける教科書づくりをしていることは大変ありがたいことだと思います。今回のテーマである「考える時間」を楽しむ授業デザインについて、どのように受け止めていらっしゃいますか?特に印象に残っている教材はありますか?

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