教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.6 (中学校版)
35/36

vol.31972年松山市生まれ。自然写真家。アラスカ大学卒業。年の約半分をアラスカで過ごし、単独でキャンプをしながら、動物やオーロラを撮影する。その活動はTBS『情熱大陸』『クレイジージャーニー』、米国『National Geographic Channel』などでも紹介される。北米大陸最高峰デナリにも登頂。公式HP:www.matsumotonorio.com連載352023年、夏。レインフォレストに囲まれた無人島で45日間を過ごしました。人間には誰一人出会いませんでしたが、数えきれないほどのサケ、そしてたくさんのクロクマと遭遇しました。アラスカはクマの地です。原野ではもちろん、村や町で見かけることも珍しくありません。中でもクロクマは臆病な性格をしていて、人間を見ると逃げていくか、一定の距離を保つのが常です。万が一襲われた場合には「戦え」といわれていますが、そんな事例を耳にしたことはありません。住民も慣れたもので、よほどの近距離でないかぎり、クマを見てもパニックになることはありません。多くの人が森へ散歩やハイキングに出かけますが、銃やライフルを携帯する人は皆無です。そのかわり、皆が実践していることがあります。声や音を出すことです。仲間としゃべる。一人の場合には、時おり「おーい」と声を出す。もしくは拍手の要領で手をパンパンとたたく。こうするだけでクマが人間の存在に気づいてくれるため、最も危険な「至近距離でばったり出くわす」状況を避けられるのです。鈴は音が繊細すぎて、アラスカではあまり効果は期待できません。人間がクマに襲われた、というニュースを日本で見るたびに、こんな痛ましい事故は起きてほしくない……常々そう思います。クマとの共生松本紀生

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る