「考える時間」を楽しむ授業デザイン教科の視点 書写ー9特集漢字を選ぶのを防ぐことと、部首や部分を応用して行書学習を深められるようにするためです。 熟語を選ぶ際には、はじめから一つに決めず、たくさん候補を挙げてみます。そのときに、国語辞典や電子端末などがあるとスムーズです。自分の趣味に関する言葉や時事ネタなど、周りの生徒と相談をしながら何の熟語にするかを考えていくのは楽しい時間であるようです。 ある程度候補が出そろったら、条件を確認しつつ題材を決定し、いよいよ硬筆での草稿を作っていきます。そこで活用されるのが教科書の巻末部です。ここには小・中学校で学習するすべての漢字の楷書・行書が掲載されていますので、行書を調べ、丁寧に書き写していきます。 ここで時間切れになる生徒も多いと思いますが、余裕があれば書写のポイントとなる部分を考え、書き込んでおくようにすると次の毛筆学習へとつながります。(第一時に一度プリントを回収し、間違いがないかの確認と指導を行いました。)第2時 毛筆練習 いよいよ毛筆での練習です。前回調べた硬筆での草稿をもとにして、それぞれの題材を作品にしていきますが、実際に毛筆で書いてみるといくつかの問題が発生します。①字形について 画数が多い字を選んでいるため、多くの生徒は文字が大きく膨張してしまうことが見受けられます。その際には、部首と旁との大きさ関係や位置関係を観察して書くように指導することで改善されました。②筆使いについて 原稿を硬筆で書いているために、そのまま毛筆で表現すると線に抑揚のない作品となってしまいます。これまでの学習を振り返り、毛筆のよさを生かせるにはどうすればよいかを考えさせることが必要です。※本稿では「お手本」という表記がありますが、「教材文字」と同義としてご理解ください。 字形と筆使いに関する二点を指摘しましたが、このように多くの生徒に共通する問題点については、全体に向けて指導をします。また、教員の机間指導に加えて生徒間での批評の時間をとることで、生徒自ら考えながら理解を深め合うことができました。第3時 まとめ書き 前回の練習を踏まえつつ、まとめ書きをします。また、最後に自己評価や感想をプリントに記入させるようにします。 時間に余裕があれば、毛筆学習を終えて、もう一度硬筆に取り組んでみるといっそう深い学びになると思います。今回の授業ではそこまでの時間がとれませんでしたが、提出プリントへの記名を行書で書かせてみることや、日常での行書の使用を促すことで、生徒の自主的な学びにつながると考えます。〈生徒作品〉 教材文字を活用して学ぶのが書写の学習の基本ですが、応用編として自ら題材を設定してみると生徒は案外やる気を出して取り組んでくれます。もちろん、教員の専門性や生徒の得手不得手もありますが、生徒が互いに会話をしながら制作を進めることで、学習のヒントをつかむ糸口が見つかるような気がします。 また、書写は国語科の知識・技能に位置づいた学習ですが、今回のように何かひとつ作品を仕上げる緊張感や達成感を味わうことも毛筆学習の醍醐味ではないでしょうか。おわりに
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