教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.7 (中学校版)
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「×地域教材」で実社会とつなぐ(1)人の営みに着目して切実性を生む 社会で生きた人たち、生きる人たちがどのような行動をとったのかを考えたり、思いを馳せたりすることは、生徒が社会と向き合うきっかけになると考えます。「事実とのインパクトのある出会い」を演出することを通して、「どうすればいいのだろう?」「納得できない!」などの声を引き出し、生徒たちの切実性を生むことをねらいました。(2)授業の実際〜地理的分野「九州地方」 本単元では九州地方の自然環境によって生じる(生じてきた)事象を通して、九州地方の人々がどのように産業や生活を発展させてきたかを考察していく展開にしました。 第2時では、自然環境を生かして暮らす九州地方の人たちの営みを学びます。具体的には、桜島の御岳について、多い時では一年に1000回ほど噴火する事実を確認したうえで「なぜ、たくさん噴火する火山の近くに多くの人が住むのか?」という問いにつなげました。授業の後半では、鹿児島県に長年住む方のインタビュー映像を取り入れることで、教科書の記述に加え、現地の声を生かして問いの解決ができるようにしました。社会教科の視点代に描かれていたことが、授業の初めに見た『無我』や『読書』からもわかるので…」など、導入で提示した『読書』の表現をもとに、日本人画家の作品を追究する姿が見られました。資料1 生徒の端末に配布した資料資料2 第2時の板書資料3 第5時の板書・住んでいる地域の特徴をうまく利用しながら、不自由なところと向き合いながら生活しているのがすごいと思いました。北九州市は昔公害がすごいという問題があったが、北九州市の人たちが声をあげて、問題と向き合い一丸と取り組んだことや、火山灰などもある中でゴミ袋を置いたりして向き合いながら生活していたり、火山があるという特徴も、火山灰などもあるが、火山があるからこそ、温泉を盛んにしたりして、住んでいる地域の特徴や課題と向き合い、上手に活用している北九州市の人の努力や苦労が伝わってきました。・九州は海に囲まれた自然豊かで平和なイメージがあったが、その裏で火山の噴火や公害問題などさまざまな課題があったことがわかった。地域によって土地の活用の仕方がそれぞれ気候や特徴に沿っているところがすごいなと思った。印象に残ったのは福岡県北九州市の話で、行動力がすごいなと思ったし、一人の行動が今につながることもあるのだなと思った。資料4 単元を通した生徒の振り返り【参考文献】・唐木清志:『「公民的資質」とは何か ―社会科の過去・現在・未来を探るー』東洋館出版社(2016年)・由井薗健:『一人ひとりが考え、全員でつくる社会科授業』東洋館出版社(2017年) 第4~5時は、工業生産が自然環境を破壊したという負の側面をもとに、自然環境と開発について考える時間としました。前時までの自然環境を生かす九州地方の人たちの営みを踏まえたうえで、当時の新聞記事から公害の影響で廃校となった学校の事例を通して、深刻な公害が発生した事実との出会いを演出しました。そのうえで、きれいな海を取り戻すために立ち上がった母親たちの運動を取り上げることで、「母親たちの運動が私たちに語りかけていることは何か?」を考える場面へとつなげました。 「社会科×美術」など、一見すると関連性が薄いように思えるかもしれませんが、実際には社会科と芸術(絵画)は相互に影響し合うことがあります。さまざまな専門分野の知識の活用や、地域の人々の思いや営みを社会科の実践に取り入れることで、主体的に問いを見いだし、より効果的な解決策を見つけることができると考えます。11おわりに

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