教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.7 (中学校版)
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数学教科の視点x―200x―200x―200❸太郎さんは分速200mで走ります。❹朝8時半までに学校に着くために、できるだけ短いx―200の視点教科 生成AIに代表される技術の進展は目まぐるしく、世の中を大きく変えています。未来を生きる生徒たちは、生成AIとよりよく関わり、主体的に社会で数学を活用する力をつけることも求められています。未成年の利用には保護者の同意が必要ですが、保護者の協力も得ながら、文部科学省が示すガイドラインなどを参考に、生成AIそのものについての学習も必要となってくるのではないでしょうか。課題について 本稿では、生成AIを生徒たちに自由に使わせるのではなく、生成AIに一次方程式の問題を解かせてみたらという文脈の中で、生成AIを利用する授業について述べていきます。 この問題を生成AIに「次の問題を一次方程式を利用して解き、その解き方を中学生がわかるように説明してください。」と指示すると、次のように答えました。12問題太郎さんは、自由が丘駅に朝8時15分に着きました。自由が丘駅から学校までの距離は2.5kmです。太郎さんは、走るときは分速200ⅿで走ることができます。できるだけ短い距離を走って、朝8時半までに学校に着くには、自由が丘駅からどのくらいの距離を走る必要があるか求めなさい。問題の整理❶太郎さんは朝8時15分に自由が丘駅に着きました。❷自由が丘駅から学校までの距離は2.5kmです。これをメートルに直すと2500mです。距離を走るにはどうすればよいかを求めます。解き方❶時間の整理結論太郎さんは自由が丘駅から最小の距離を走るためには、学校までのすべての距離を走る必要があります。太郎さんは2500mを走る必要があります。❷走る時間を求める❸歩く時間を求める❹歩く距離を求める❺方程式を立てる❽最小の距離を走る必要がある太郎さんは残りの時間をすべて走ることになります。つまり、走る時間と歩く時間を合わせた時間が15分になります。走る時間:  分残りの時間(歩く時間):(15−  )分 この歩く時間が、太郎さんが走った後に残りの距離を歩く時間になります。❻方程式を解く走る距離がxⅿの時、全体の時間が15分になるように式を立てます。x―200しかし、太郎さんの歩く速さがわかりませんので、ここでは走る距離を求めます。太郎さんが15分以内に2500mを走るために、走る距離が必要です。❼再計算走る距離を最大化するために必要な時間を求めます。つまり、  =15両辺に200を掛けます。x=200×15 x=3000これは明らかに太郎さんがすべての距離を走る必要があることを意味します。太郎さんが学校までの距離を走るには、最大で2500mを走る必要があります。太郎さんが自由が丘駅に着いたのは8時15分です。8時半までには、15分間しかありません。走る必要がある距離をxⅿとします。太郎さんは分速200mで走るので、走るのにかかる時間は  分。太郎さんは全体で15分しかないので、残りの時間で歩かなければなりません。つまり、走る時間と歩く時間の合計は15分になります。自由が丘駅から学校までの距離は2500mです。太郎さんが走る距離をxⅿとした場合、歩く距離は(2500−x)ⅿです。+2500−x―歩く速さ=15ポイント ここで解決を図った問題は、歩く速さが与えられていない条件不足の問題です。このままでは解くことができません。しかし、生成AIはこのように解いてくれます。授業では、この生成AIが与えてくれた答えを評価し改善するような方程式の利用が考えられるのではないでしょうか。この解答が正しいかを評価し改善するには、速さと時間と距離の関係についての知識、文字式を具体的な場面に読むことや、文字式や一次方程式についての知識が必要です。それらの知識などを利用しながら、この解答の妥当性を評価し正しく改善することが必要となります。一次方程式を立式し解決する力だけでなく、一次方程式を利用して得られた解決が正しいかどうかを判断できることが大切です。また、このような学習は、一次方程式を利用する力を培うとともに、生成AIが正しい答えを与えてくれるわけではないという経験を生徒たちにさせることもできます。生成AI×数学よりよく未来を生きるために必要不可欠な数学常葉大学大学院学校教育研究科准教授 鈴すず木き 誠まこと 数学

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