教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.7 (中学校版)
14/36

理科考え方教科の視点の視点教科 各教科等における「見方・考え方」は、現行の学習指導要領の中核を成す重要な枠組みとなっています。各教科にはそれぞれの目的があり、その目的を達成するために内容の構成が工夫されています。教科の内容や役割は異なるものの、その違いを「見方・考え方」によって明確にする意図があるのです(文部科学省,2018,p.4)。さらに、学習指導要領では、各教科等の「見方・考え方」を働かせることで、「資質・能力」を育成することを目指しています。これは、従来のコンテンツベースの教育から、より柔軟で実践的な能力を重視するコンピテンシーベースの教育へとシフトすることを意味しているといえるでしょう。つまり、単に知識を習得するだけでなく、その知識をどのように活用し、問題解決に結びつけるかといった「見方・考え方」を重視する教育を推進することが求められているのです。 しかし、「見方・考え方」という概念は広範であることから、その具体的な適用や実践においてはさまざまな解釈が可能になります。そのため、具体的な言葉にして指導計画や指導案の検討、つまり共通理解を行おうとすると、「そもそもの指導計画や指導案における『見方・考え方』とは何か?」という議論が始まり、結局、具体的な結論が出ずに曖昧なまま、学習内容やコンテンツベースの議論に戻ってしまうことが見受けられます。 このような状況が続くと、「見方・考え方」によって育まれるはずの「資質・能力」が理念やスローガンのままで留まってしまう恐れがあります。本稿では、理科教育を中心に、「見方・考え方」を教育現場で効果的に機能させるための具体的な方法や指針を提示したいと思います。 「見方・考え方」は一つの語句としてよく扱われますが、「見方」と「考え方」の違いを整理することが重要です。本稿では、「見方」を「物事の捉え方、物事への14向き合い方」、「考え方」を「事象や事物を処理するときの過程」としてみました。 これらを整理するため、図1のように二つの軸を設定してみました。横軸の「見方」には「課題の解決」と「仮説の検証」を、縦軸の「考え方」には「拡散的な判断」と「収束的な判断」を配置しました。これらの要素は、互いに補完し合う概念として捉えられることが多いものです。 このようにして座標軸を作成し、四つの象限を想定しました。この評価軸を用いることで、具体的な教科や学習内容を意識せずに「見方・考え方」の概念を整理することができます。この枠組みは、森・芳賀(2023)の「STEAM教育のフレームから考案した評価軸」を参考に作成したものです。 各象限の強みを活かすことで、よりバランスの取れた思考と行動が可能になるでしょう。第1象限は「仮説の検証」という「理論的、抽象的」な「見方」で、「拡散的、主観的、直観的」な「判断」をする領域です。第2象限は「課題の解決」という「実践的・具体的」な「見方」で、「拡散的、主観的、直観的」な「判断」をする領域です。第3象限は「課題の解決」という「実践的、具体的」な「見方」で、「収束的、客観的、論理的」な「判断」をする領域です。第4象限は「仮説の検証」という「理論的、抽象的」な「見方」で、「収束的、客観的、論理的」な「判断」をする領域です。課題の解決どうする?実践的、具体的拡散的な判断感じよう主観的、直観的21見方34収束的な判断考えよう客観的、論理的図1 「見方・考え方」の四象限評価軸 ここで各象限の性質を簡単に整理してみましょう。仮説の検証なぜ?理論的、抽象的「見方・考え方」の現状「見方・考え方」の捉え方「見方・考え方」と四象限評価軸による学習の展開北海道教育大学釧路校教授 森もり 健けん一いち郎ろう理科

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る