道徳教科の視点の視点教科 全国で本格的な1人1台端末の活用が開始してまだ間もなかった令和4年度の初めごろ、私が副部長を務めていた区内の中学校教育研究会道徳部では、ICTの活用方法について議論をするなかで「授業にICTを使用した場合と使用しなかった場合でどれだけ違いがあるのだろう」という疑問が生まれ、実際に授業を行って検証してみようということになりました。 本稿では、研究を通して考えた道徳の理想的な話し合い活動のあり方と、それを実現するためのICTの効果的な活用について述べたいと思います。20写真1 タブレット端末を使用したクラスの授業の様子 タブレット端末の使用が道徳の話し合い活動に「有効」「少し有効」と感じている生徒・教員が多数でしたが、他の教科と比較するとわずかに割合が低く、一部生徒からは、「使用しなくても特に不便ではない」「紙に書くのと変わらない」という意見もありました。検証の方法 生徒数31名の2年A組と34名の2年C組を対象に、同じ教材を用いて授業を行いました。その際、4人班での話し合い活動と結論の共有の場面で、A組ではホワイトボードを、C組ではタブレット端末を使用しました。話し合いに関わる活動の場面に絞ってICTの効果を比較・検証するために、それ以外の導入や終末の活動は両クラスとも共通にしました。検証を行った結果 タブレット端末を使用したC組では、ふだんから端末の操作に慣れていたこともあり、話し合い活動や、話し合った内容の共有はスムーズに行われていました。意見の共有にかかる時間を短縮できたことで、多くの意見を集めることができました。しかし、「対話をする」という点に関しては、端末に向き合ってしまい、話し合いがおろそかになってしまう姿も見受けられました。 ホワイトボードを使用したA組では、話し合い活動は活発に行われていたものの、話し合った内容をまとめる活動や意見の共有に時間がかかり、50分の授業時間内に全ての活動を終えることができませんでした。意見を交換できた人数も、タブレット端末を使用したC組と比べると、少人数に限られてしまいました。【質問】話し合い活動の時にタブレット端末は有効か。■道徳以外の教科■道徳生徒生徒図1 アンケート結果(回答数:生徒428名・教員23名)教員教員あまり有効ではない4%少し有効35%あまり有効ではない14%少し有効37%有効ではない1%少し有効26%有効60%有効74%あまり有効ではない4%有効ではない3%少し有効26%有効46%有効70%研究当時(令和4年度)の勤務校の状況 世田谷区のICTインフルエンサーでもある私は、当時勤務していた中学校で、ICT担当と協力して積極的なICT活用に力を入れていました。ICTの日常使いを目標に「いつでもどこでもiPad」という標語を掲げ、ルール作りや情報モラル教育には十分配慮しながら、生徒にはいつでも制限を設けず端末を使わせるという取り組みを行いました。 授業展開を考えるにあたって、当時の勤務校の生徒と教員にアンケートを実施して意識調査を行ったところ、結果は図1のようになりました。はじめに研究の概要ICTを活用した効果的な話し合い活動のあり方について道徳東京都世田谷区立用賀中学校校長 毛もう利り 慎しん治じ
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