教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.7 (中学校版)
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道徳教科の視点写真2 ホワイトボードを使用したクラスの授業の様子徒の意見を知ることでどう感じたのかを引き出すことを、ぜひ意識してみてください。 みんなの意見をしっかり見るための時間を確保することも重要です。班ごとに意見をまとめる活動を行っているケースも多いように見受けられますが、ICTで全員の意見を共有できるようになった今、あえて班でまとめる必要はないのかもしれません。 教師の補助発問ではなく、他の生徒の考えが「揺さぶり」となり、生徒たちをより深い議論や思考へと導いていく。それが理想的な話し合い活動ではないかと考えます。「紙」との併用が有効な場合も 話し合い活動にICTを使用する際には、端末にばかり向き合ってしまって肝心の「対話」がおろそかになってしまうことがないように注意が必要です。そのような場合には、従来通り紙のノートやワークシートを使って、紙に書いたものを写真に撮って共有する方法も有効です。 画面共有は便利な機能ですが、共有画面を見ている時に端末上にメモを取ることができないことも、もったいないと感じています。全体の意見を見た時に自分はどう感じたのか、どう考えるのかということを生徒自身に自覚させるためには、端末と紙のノートなどを併用して、感じたことをその都度紙に書き留めさせることも必要であると思います。 全体共有をしたり他の生徒と即座に意見交換をしたりできるという点に関しては、ICTはとても優れています。自分が道徳の授業でどんなことを学んできたかと振り返る時には紙のほうが見やすい場合もあります。また、評価をする際にも同様のことがいえます。中心発問で考えたことや授業で気づいたこと・学んだことはワークシートやポートフォリオなどに記入させ、書いた内容を写真に撮らせて共有するということもできます。大切なのは、自分がその時間に学んだことをまた振り返ることです。ICTと紙のノートやワークシート、ポートフォリオなどを活用するハイブリッド型の授業が望ましいと考えます。 議論して考えを深める道徳授業の実現のためには、ICTの特性を活かすことのできる適切な使用場面を見きわめて効率的に意見の共有を行うことで、十分な議論の時間を確保し、生徒がより多くの考えにふれられるようにしていく必要があると考えます。21意見の収集にICTの利点を活かす ICTを活用する最大の利点は、共有機能により短時間で多くの意見を集められることだと感じています。ホワイトボードを使用した場合、班の数が多いと、全ての班が時間内に発表できるとは限りません。 意見を共有する際に、生徒の名前の表示・非表示を切り替えられる機能を活用することは、生徒の素直な意見を引き出す時に有効です。家族や友達に関する教材など、名前を出すことで本音を書くことをためらってしまうような場合には、名前を非表示にすることも一つの手段です。私が道徳の授業を行う時には、名前を出すか出さないか、授業の初めに生徒と一緒に決めるようにしています。(名前を出した状態でも素直に意見を言い合える学級風土をつくることも、教員の大切な役割です。3学期には名前を出して意見交換できるようなクラスを目ざしたいですね。) また、発言をすることや文字を書くことが苦手な生徒が、端末に対してであればたくさんの意見を考えて書くことができるという点も、特筆すべき利点だと考えています。全ての生徒たちの意見をきちんと拾える授業が今後求められます。「伝え合い」から「議論」へ 「伝え合い」というのは、自分の意見を言って終わってしまい、お互いの考えが交換できていない状態のことです。私は、ICTを活用することでせっかくクラス全員の意見を見ることができるのだから、話し合いの時間を単なる「伝え合い」で終わらせてしまってはもったいないと思っています。この「伝え合い」から脱却するためには、自分と異なる意見や同じ意見について、なぜそう考えたのかということを話し合う場にしていくことが大切です。その際、「みんなの意見を見てどう思ったか」という発問が鍵になります。他の生道徳の理想的な話し合い活動とはおわりに

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