ともにはぐくむ共育のツボ28 子どもが自分らしい社会との向き合い方を学ぶときに大切なのは、相手との間にある温かな空気、関係性であって、必ずしも場所ではないようです。 学校に来ることを選ばない子どもたちをどのように捉え、関わっていくとよいか、私自身が悩みながら行ってきた実践をご紹介します。全国各地の先生がたのアイデアを詰め込んだ「共育のツボ」。「ともにはぐくむ」をテーマに、子どもたちとの関わり方や学級経営の工夫、先生ならではのお悩みとその解決法など、日々奮闘する先生がたの情報共有の場となるようなページをお届けします。その子にとっての「いつか」大人になる道の今どこにいるんだろう、と考える 子どもたちは多くの発達段階を経て、自分とはどういう人間なのか、どう生きていきたいのかという自分への問いに答えを見つけていきます。人生のいつ頃にどのような変化があり、何を獲得していくのかをイメージしておけば、焦らずに子どもたちの発達を見守ることができるということがわかります。発達心理学を学んだことで、ずいぶんほっとしたことを覚えています。家で過ごしている≠休んでいる あるとき、保護者のかたが話してくれました。「うちの子は平日はいつも苦しそうだけれど、土日や夏休みなど“誰にとっても休みの日”は安心して過ごしている」と。そのとき、不登校が長引いている子どもたちは自宅でのんびりと「休んで」いるのではなく、「当然できるはずだと思う」のに「できない」を繰り返し、毎日、自分に落胆し続けていることに気づきました。 これまでの「みんなも〇〇さんと会いたがっているよ」「目標をもって登校してみよう」といった言葉かけが、「先生の期待に応えられない自分」という傷を増やしてしまっていたのでは、と本当に申しわけなく思いました。 その子の立場になって考えると、自分を肯定する機会が少なくなっているということがわかってきます。「あなたをとても大切に思っているよ」「あなたの存在そのものを尊重しているよ」というメッセージを、その子に届く形で発信することにしました。
元のページ ../index.html#28