教育情報誌 学びのチカラ e-na!! vol.7 (中学校版)
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6①国語教科の視点の視点教科 学習の導入に関するアイデアは、学習全体を見通すことで生まれてきます。ゴールまで見通すと、「では、どのような導入が有効なのか」という逆算の発想が出てきます。学習者に身に付けさせたい力や教材を通じて育てたい学習者の姿をイメージすることで、単元の始まりにどのような入口を用意するとよいかを具体的に想定できるのです。そういう意味でいえば、教材の導入を工夫するというのはなかなか難しい課題の一つといえます。「音読・朗読」の指導を行う場合であれば、「音読・朗読」について具体的に注意したいことを整理したり、実際に学習者にとって「こんなことができるようになってみたい!」「自分もやってみたい!」と思わせるような言語活動のモデルを示したりすることが必要です。扱う教材が学習者にとってハードルが高いようであれば、その教材世界に少しずつ誘い込むようなスモールステップの発問や課題づくりが有効です。の価値観や、読み手に合わせて物語は形を変える場合があるということが明らかになります。学級文庫などに『竹取物語』をはじめとしたさまざまな絵本や生徒向けの読み物(岩波少年文庫など)を設置し、絵本との読み比べを楽しめる環境を作っておきたいところです。昔話の結末は実は一つじゃないんだ。 『浦島太郎』という昔話がありますが、その結末に理不尽さを感じたことはないでしょうか。実はこのお話は近代に作られた筋であって、例えば『御伽草子』版の『浦島太郎』ではその結末は異なります。太郎がおじいさんに変化してしまうところは同じですが、その後、太郎はさらに鶴に変身し、亀とともに夫婦として過ごし、夫婦ともに浦島の明神となって人々を救うことになります。そして「まことにめでたい話であった」とこの物語は閉じられます。 絵本版と『御伽草子』版の『浦島太郎』の概要を比較すると、ずいぶん物語の内容が変更されていることがわかります。「『御伽草子』版のおもしろさ、不思議さはなんだろう?」「なぜ絵本ではこんな形に変更されたのだろう?」そのような導入をとおして、時代聴き入ってしまう朗読にはどんな工夫が隠されているだろう? 令和3年度版『伝え合う言葉 中学国語2』(教育出版)p.130の「みちしるべ」では、「登場人物や語り手などの役割を決め、場面に合わせて朗読しよう。」といった言語活動が示されています。これは第2学年の指導事項〔知識及び技能〕(3)アに「朗読する」という、言語活動と同等の内容が組み込まれているためです(『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編』)。まずはこの音読・朗読の指導を中心的に扱う単元の導入を考えてみましょう。 古文を朗読する場合は高度な内容を目ざすのではなく、歴史的仮名遣いや古文のリズムなどを踏まえた音読に慣れることを徹底したうえで、表現上の工夫を行う余裕があれば、さらに高みを目ざす程度で考えるとよいと思います。 最初に指導者の朗読や用意されている朗読データによる、他の章段や作品(『扇の的』や『竹取物語』なゴールは導入から逆算せよ第1学年『昔話と古典-箱に入った桃太郎-』から『物語の始まり-竹取物語-』へ第2学年『敦盛の最期-平家物語-』古典の学習に引き込まれるしかけづくり早稲田大学教育・総合科学学術院教授 菊きく野の 雅まさ之ゆき国語

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