前轢3ひろさきあつれきこんにちは。お会いできるのを楽しみにしていました!のりんごを実家のある弘持ってきたんですけど…りんご、いただけるんですか!ありがとうございます。とてもきれいなのでここに置いて始めましょうか。武田 今のメディアは、相手より優位に立つ、人を説得したりマウントをとったりする、つまり「ディベート力」のような話術を身につけていることが重要だと考えられているように思います。でも、実はそうではなく、自分の思っていることをわかりやすく伝え、聞き手も、相手の思いを正確に把握する技術のほうが、ずっと大切だと思うんです。そのためには、言いたいことをみんなが安心して、自由に表現できる環境を作ることが必要です。そんな自由な環境の中で、新しい気づきやアイデアが生まれ、それが社会をよくしていく……。そんな「おしゃべりのひな型」を、テレビを通して示せないかと思って、毎日、自分の番組に取り組んでいます。庭田 私が教師になった頃は、学校に「おしゃべり」がたくさんあふれていました。今は、コロナの影響もあると思いますが、減ってきているように感じます。武田さんは「おしゃべり」が減った理由をなんだと感じていますか。武田 自分の話がどう受け止められるかに、社会が敏感になりすぎているのではないでしょうか。僕が若い頃は、あまり後先を考えずになんでも言いたいことを言って、それで先輩にたしなめられたり、ときには同僚とけんかになったりすることもいとわなかった。今は、軋ことはよくない、という空気がある気がしますね。庭田 だんだん教師が思ったことを自由に話せなくなってきたように感じます。その人のためによかれと思って言ったのに、逆の反応が返ってくる……。だから必要最低限のことしか言わなくなるんです。若い頃は、言いたいことを言って、よく先輩に叱られはしましたけど、みんなで解決策を考えられたんです。でも今は、自分の言ったことに対してさまざまな批判を受けて、そこで終わりということもあります。子どもたちどうしの会話も少なくなってきたと思うときもありますね。庭田 武田さんは、どんなお子さんだったんですか。武田 そうですね。よく近所の子たちと外で遊んでいましそのものを避ける、人とぶつかる画・取材できる人材を求めていて、ディレクター志望だった僕 今回は、フリーアナウンサーの武田真一さんをお招きして、弊社国語科編集長の庭田瑞穂と、「おしゃべり」をテーマに対談をしていただきました。武田 庭田さんは、青森県内で先生をされていたんですか。庭田 はい。小学校で全学年、全教科教えてきました。複式学級の担任も経験しました。大学を出てから34年間です。今日、武田さんとお会いできるということで、ぜひお伺いしたいことがあるんですが、武田さんはどうしてアナウンサーというお仕事を選ばれたんですか。武田 実は僕はディレクター志望だったんです。当時、NHKはしゃべりがうまい人材ではなく、しゃべる中身を自ら企をアナウンサーとして育成してみようということで選ばれたようです。庭田 ディレクターを志望したのにアナウンサーで採用と聞いてどう思いましたか。武田 僕は、ずっとバンドや演劇が好きで、言葉を肉声で表現する仕事をしたかったということもあったので、アナウンサーで採用と聞いた時、これはまさにそんな仕事だ、と思って引き受けました。庭田 私が教師になったのも似ていて、言葉で伝える楽しさを仕事にしたかったというのがありました。武田 でもメディアの世界は、自分だけの意見を言葉で伝えればいいというものでは決してありません。多くのスタッフが、それぞれの思いを込めて番組のメッセージとしていくので、言葉による表現も決して僕の自由になるものではない世界でした。特に僕はニュースの仕事をしてきましたので、言葉を生業としながら「おしゃべり」をしてこなかった。僕がしてきたことは主にコミュニケーションじゃなくて、インフォメーションだったんだなって思ったんです。だから、これからは「おしゃべり」を大切にして、コミュニケーションの価値をもっと高めていきたいと思っているんです。庭田 対談のテーマは「おしゃべり」でどうでしょう、という武田さんのご提案を受けて、改めて「おしゃべり」について考えてみました。私は平成2年に教師になって、去年、辞めたんですが、最近、学校現場に「おしゃべり」が少なくなってきたと感じていて、それはなぜなんだろう、と思っていました。武田さんは、どうして今、「おしゃべり」が大切だと考えていらっしゃるんですか。今「おしゃべり」が減っている「おしゃべり」の効用
元のページ ../index.html#3