message5武田真一さんから、先生がたへのメッセージ武田 授業でも会議でも、とっぴな意見を思わず言っちゃう人がいますよね。心理的安全性が保たれた中で、みんなが自由に発言すると、一見、無駄でおかしな発言も出ます。でも、その中の一つが解決策かもしれないんです。僕はこれから求められるのは、すべすべの舗装道路じゃなくて、磨けば光る原石がそこらへんに散らばっている道、というふうに考えたほうがいいと思っています。庭田 原石たちが、「私はここにいるよ」という声を出せるようにする、というのが大切なんですね。武田 そうですね。日本は、ますます少子化が進んで人口が減少していきます。だからこそ、たった一人のリーダーが「私の決めたことがいちばん」として全てをひっぱる、というふうにはしないほうがいいと思うんです。一人一人がアイディアを出し合って、「そんな考えもあるんだね」と気づき合っていったほうが全体的な価値が上がると、僕は考えています。だから、人の意見を尊重する訓練を積んだうえで、誰でも言いたいことを言えるという学びを、これからの学校に作っていくことが大切だと思っています。庭田 私も静かな職員室より「うるさいな、この職員室は」と思うくらいがいいし、みんなが好き勝手なことを言っているけど、お互い尊重し合って発言している自由な空間がある授業がいいと思います。編集部 お二人のおしゃべりにはたくさんのヒントがありました。「e-na!!」を読んでくれたかたがたの、「おしゃべり」のきっかけになってくれたらうれしいです。今日は、貴重なお話をお聞かせいただき、どうもありがとうございました。 学校の先生は、毎日、本当に忙しくされていると思います。これからは先生の働き方や学校の仕組みなどを社会全体で支え、考えていく必要があると思います。そして、子どもたちを学校や先生だけに委ねるのではなく、私たち一人一人が育てるのだ、と考える社会にしていく。そのために僕は今の仕事をしています。先生がた、これからも一緒にがんばっていきましょう。のはこういうことなんですね」と相手を理解しようとする、つまり「聞く」ことがもっと大切だと思っています。庭田 同感です。でも、今の社会では「聞く」ことが大切にされていると思いますか。武田 されていませんね。人の言うことを聞くふりをして、みんな次に自分の言いたいことを考えているような気がします。話を「聞く」ときは虚心坦懐に聞く。相手の話をしっかり聞いていれば言わなければならないことが自然に湧き出てくる。それが大事だと思います。庭田 学校というところは、子どもたちに「おしゃべりするな」って言わなきゃいけない時もあるんですけど、どうしたら、子どもたちに「おしゃべり」の楽しさ、大切さを教えられると思いますか。武田 確かに、放っておけば子どもはいくらでもおしゃべりするので、「黙って話を聞きなさい」という場面も、学校にはありますよね。庭田 教師と子どもが一方通行で、「先生の言うことを聞いてノートにまとめなさい」というのが私たちの時代だったかもしれません。でも、今はできるだけ「関わり」の中で「学び合う」ことが重視されてきています。武田 相手の言うことを聞くと自分も話したくなる。そんな「話す」と「聞く」のセットがなくなり、「おしゃべりなんかしていないで、先生の話を聞きなさい」だけだと、きっと子どもたちは聞いていられなくなります。声は出さなくても、先生の話を聞いていると何か言いたくなる、友達の意見を聞いていると何か言いたくなる、それを子どもたちに言わせたり、先生が代弁したりしてあげる。授業をそんな構造にできないでしょうか。庭田 授業という形態だけど、対話になっている。そうすることで、子どもたちも先生や友達の話を聞きたくなる。授業は対話なんだ、というイメージを子どもたちにもたせるということですね。武田 学校の授業ですから、ここまで到達しなければというのがあるかもしれませんが、どこかで到達度を度外視して、子どもたちが、その場で気づいたこと、言いたいこと、その他、何を話してもいいという時間を作って、それを積み重ねていくと何か変わらないでしょうか。庭田 なんでも自由に話してもいい空間、時間を作り続けていくと、心理的な安心感を生んで、「聞く」しかしなかった子どもたちが「話す」ようになっていく、それを諦めないで続けていくことで、もっと前に進んでいけるかもしれないですね。「話す」と「聞く」をセットで学校の中でできること
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