右手の基本奏法
ギターの演奏技術において、志向する音楽によって大きな違いが出るのは左手より右手の使い方で、大きく分けるとピッキングとフィンガー・ピッキングの2種類があります。
クラシック・ギターの右手は指で弾くのが当たり前なので、フィンガー・ピッキングなどという言い方はしません。小指を除く4本の指で演奏します。
クラシック・ギターでは親指をp、人差し指をi、中指をm、薬指をaという記号で表し、楽譜上で指使いを指定します。pで低音域を、残りのi、m、aで主旋律、中声部を弾き分けるのが基本です。メロディーだけを弾くときにiとmの2本を交互に素早く動かして弾くトレモロ奏法もあり、表現力豊かに奏でることができます。こうした奏法で最大限の効果を上げるため、クラシックのギタリストは右手の爪の手入れに気をつかいます。掌側から見て、指先から1~2mmほど出た長さで揃うよう、ヤスリを使って滑らかに仕上げます。爪が割れやすい人はマニキュアで補強もします。そのため、専用の用具が楽器店で売られています。
フォーク・ギターでは、右手はピックを使ってコードを打楽器のようにかき鳴らすストローク奏法と、指を使ってクラシック・ギターに近い方法でアルペッジョ等による伴奏やソロ演奏を弾くフィンガー・ピッキング奏法とを併用します。
ピックには2種類があり、日本の箏のように、指に装着して使うフィンガー・ピック(親指に付けるものはサム・ピックといいます)と、指でつまんで使うフラット・ピックとがありますが、現在ではフラット・ピックを指す場合がほとんどです。
フォーク・ギターで右手の指を使う弾き方をフィンガー・ピッキングと称しますが、現在では、この名称は歌の伴奏でアルペッジョを弾くときよりも、ソロ演奏のスタイルを指す場合が多くなりました。ピック奏法に比べ音量や迫力は劣りますが、クラシック・ギターの奏法のように、メロディー、ハーモニー、リズムを一人で演奏することができます。1980年代以降、この分野でさまざまな革新が行われ、ギター音楽の新しい一分野として大きな人気を得るようになりました。
エレクトリック・ギターではピックを使うのが主流で、アンサンブルにおけるパートとしてのリズム・ギター、リード・ギターという概念が定着しています。リズムにおいては低音部の単音、または4度や5度音程による、いわゆるパワー・コードを駆使するリフと呼ばれる様式がロックの象徴となっていますし、高音部のコードを鋭く刻むカッティングは、現代のダンス・ミュージックにも欠かせないパートです。
リード・パートではピックを使って単旋律を演奏するいわゆるギター・ソロが、ロックやポップ・ミュージック全体で大きな役割を果たしています。ギタリスト同士で競われるパッセージの速さ等の技巧、音楽的難易度は、さながらオリンピックの記録のように、とどまることなく進化を続けています。
ただしエレクトリック・ギターでも右手の指で、つまりフィンガー・ピッキングで演奏するプレイヤーは決して例外的ではありません。フィンガー・ピッキングを主たる奏法として使うエレクトリック・ギタリストといえば、最近ならデレク・トラックス、ベテランならジェフ・ベックや元ダイアー・ストレイツのマーク・ノップラー、ジャズ・ギターのウエス・モンゴメリーなどが有名です。
⇨いろいろな奏法