2 これからの教育は、ICTなどの情報機器を活用し、一人一人の子どもが自らの課題を設定し、情報を収集し、整理・分析し、課題を解決していくという、主体的で個別最適な課題解決活動が求められています。このような資質・能力を子どもに獲得させるためには、以下のような工夫が必要と考えられます。 知識は、基本的に、他の領域でも適用できるようにすることが大切です。理科では、一つの単元において獲得した自然の事物や現象に関する性質やきまりなどを他の単元にも適用できるようにしておくことが大切になります。 問題解決といえば、今まで、1問題の見いだし、2予想・仮説の発想、3観察・実験方法の立案、4観察・実験の実行、5観察・実験結果の整理と考察、6結論を導き出すことなど、という問題解決の過程を踏まえることが中心になっていました。しかし、子どもが問題解決過程を踏まえるだけでは、子どもに問題を解決していく力は獲得できないと考えられます。子どもが問題を解決していく力を獲得するためには、1~6の各過程における「すべ」を獲得することが必要になります。例えば、問題を見いだす場面では、「枯れた植物」と「枯れていない植物」とを比べることから、一方は枯れて、他方は枯れないのはなぜか、というような問題を見いだす「すべ」を子どもが獲得することです。このような「すべ」が1~6の各過程で必要となります。 観察・実験を行う場面において、子どもは、自然事象の何に注目して観察・実験をすればよいか明確でない場合が多いです。そこで、観察・実験を行う場面では、子どもが自然の事物・現象を観察する視点を獲得することが必要になります。この事象を観察する視点は、予想・仮説に基づくものです。つまり、子どもが予想・仮説に基づき観察の視点を引き出す「すべ」を獲得できるような学習指導の展開が必要になります。 デジタル機器の活用は、いろいろな場面が考えられます。とりわけ、一人一人の子どもが行った観察・実験の結果を他の子どもと共有する場面では、きわめて有効で効果的です。つまり、観察・実験の結果の収集と保持、そして、他者との共有化の場面においてデジタル機器の活用が大切と考えられます。 最近、SDGsという言葉を、テレビのコマーシャル等でも聞くことができます。SDGsは、国連が定めた17の目標を2030年までに達成しようとするものです。この目標の本質の一つは、資源などにおいて無駄をつくらないという考え方です。このような考え方をもとに、学習指導を展開することが大切です。 以上のような考え方をもとにして、教科書の改訂を行いました。この考え方を一言でいえば、子どもに「未来を生き抜くために必要な力が獲得できる教科書」です。この教科書を活用することによって、一人一人の子どもが「自分の考えをもとにして、新しい価値を創造していく」ことになると考えます。1949年三重県生まれ。広島大学教育学部卒業。博士(教育学)。1991年より1999年まで文部省初等中等教育局小学校課教科調査官。1999年より広島大学教授、2001年より広島大学大学院教授。2013年より2022年まで日本体育大学教授。広島大学名誉教授。国立教育政策研究所名誉所員。❶ 確実な知識と適用できる知識の獲得❷ 問題を解決していくための「すべ」の獲得❸ 観察・実験を行う場面における視点の明確化❹ デジタル機器の活用❺SDGs ➡ 無駄をつくらない監修者⻆屋 重樹 (かどや しげき)令和6年度版の教科書の特徴未来をひらく
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