監修者■■■■アリグモというクモがいます。一見、アリに見えますが、アリをよく知っていれば、アリでないことに気づきます。白紙の状態で何かを見ても観察したことにはなりません。観察を積み重ねることで、ちがいがわかるようになり、ものを見ることができるようになります。とにかく自分で見てみることが大切です。科学哲学者カール・ポパーは、科学について、「反証可能性」という考え方を提唱しました。「全てのハクチョウは白い」という理論は、黒いハクチョウを見つけることで覆されます。科学的に100%の正解はないというわけですが、「確実なことは何一つない」ということではありません。常に疑う姿勢をもって「確実なこと」を探し続けているのが科学だというのです。成長していく、つまり変わっていくのが子どもです。あらかじめ答えがわかっていることなんて、面白くありません。世の中にはそのような、答えが見えないことがたくさんあります。自分が知らないことに出会えば、それは発見であり、自然に身を置けば発見の連続です。そして、発見によって「変わった」自分には、今までと「ちがった世界」が見えてきます。だから自然の探究は「面白い」のです。略 歴41937年神奈川県生まれ。東京大学医学部卒業。医学博士。1995年に東京大学医学部教授を退官、1996年より2003年まで北里大学教授。東京大学名誉教授。著書に『からだの見方』筑摩書房、『唯脳論』青土社、『バカの壁』新潮社、『養老孟司のデジタル昆虫図鑑』日経BP社、『遺言。』新潮社、『ものがわかるということ』祥伝社 など多数。
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