「中学教科通信」特別号
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図2 ロイロノートで配信した検証実験動画の一部 つまり,授業前に課題提示の動画を,授業後に検証実験の動画を配信し,授業時間は,オンラインでも,対面でも,友達の予想を聞いたり,友達と一緒に実験を見て確かめたりするなど生徒どうしの双方向的なやりとりに絞ることにしたのです。対面授業における予想の発表や討論は,自席に座ったまま,前を向いて発言させているのでやりにくいところがありますが,それでも友達の意見から予想を変えたり,思考を深めたりする姿が十分に見られます。 7月に入り,一斉登校と45分での対面授業が始まりましたが,依然として実験・観察やグループワークを控えるような状況が続いています。Zoomを用いたオンライン授業の必要性はなくなりましたが,いつまた臨時休校やオンライン授業の状況に戻るかわからない状況であることに変わりはないので,私は前述の授業の準備を続けています。45分授業になった分,課題の提示と予想を書かせることは授業内に行うことにしましたが,それまで授業の前に配信していた課題提示の動画と,授業のあとに配信していた検証実験の動画は作り続けて,配信を続けています。 微熱など,いわゆる風邪様症状の生徒や,家族に発熱などの体調不良者が出た生徒は登校を控えてもらう出席停止措置がありますが,そうした生徒たちへのサポートも重要な課題です。私の授業では,欠席者も課題提示動画と検証実験動画の両方を視聴すれば,授業の大筋はつかむことができるようになっています。 Zoomとロイロノートを併用することによって,いわゆる講義型の授業ではなく,自分で考え,友達の考えも聞きながら,最後は実験によって思考を進めていく授業のスタイルを貫くことができました。たとえオンライン授業でも,教師の一方的な説明を聞くだけの授業よりも,自分で考えて,友達の考えを聞きながら思考を進めていく授業の方が理解も深まるし,何より楽しいと思います。苦労して作った実験の動画も,生徒たちは自分の予想が合っているかどうかを気にしながら見てくれています。 しかし一方で,生徒たちは実験の結果を,どこか素直に受け入れすぎているように感じています。やはり,自分の予想が正しいかどうかを,自分の「目」で,「手」で確かめるということは,理科の授業において何より大切なことの一つなのだと痛感しています。また,実験や観察の技能の指導は全く行うことができていません。1日でも早くこの状況を越えて,生徒たちが理科室で目を輝かせて実験や観察に取り組む日が戻ってくることを待ち望んでいます。した上で授業に臨めます。通常時の授業であれば,生徒に予想を書かせている間に机間指導をして行っていたことを,オンライン授業の前に済ませておくことにしたのです。ノートは通常の授業のときと全く同じように紙のものを作らせ,予想や確かになったことの提出は,スマホやタブレットで撮影した「ノートの写真」を提出させることにしました。 検証実験は,これまで生徒実験や演示実験で行っていたものを,全て演示実験にして自分で動画を撮影することにしました。放課後の理科室で短い実験の動画をiPadで撮影し,ロイロノートの中でナレーションを吹き込み,指示や補足説明をスライドにしたものを作りました。Zoomの授業では「画面共有」機能を使って,対面の授業ではテレビに映してみんなで視聴させ,演示実験の代わりとしました。検証実験の動画もロイロノートで配信してあとで繰り返し見られるようにしました。表.コロナ禍における私の授業設計のまとめ教師生徒授業前ロイロノートによる「課題提示」動画の配信ロイロノートによる「予想」の提出Zoomまたは対面による授業 ・予想の発表と討論 ・「検証実験」動画の視聴ロイロノートによる「検証実験」動画の配信ロイロノートによる「確かになったこと」の提出授業後授業中コロナ禍における私の授業実践一斉登校は始まったけれど…成果と課題コロナ禍前後の学校の状況コロナ禍における理科の授業の模索休校期間中に導入された二つのツール分散登校によって生じたもう一つの課題コロナ禍における私の授業実践一斉登校は始まったけれど…成果と課題 11教科の視点 理科特集 コロナ禍を生きる

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