限られたインターネット環境コロナ禍が照らすニカラグアの現状コロナ禍のなかで,世界の中学生たちはどのように学習に取り組んでいたのでしょうか。海外在住のライターが報告します。 ※情報は8月中旬現在のものです。オンライン授業は夢のまた夢 ~ニカラグアの場合~ ニカラグアは中央アメリカに位置する,人口約659万人の小国。海,湖,火山と風光明媚な自然を誇りますが,国際通貨基金が発表する一人あたりのGDP(国内総生産)は世界146位(2018年度)で,33ヵ国ある中南米諸国の中でもハイチに次いで貧しい国です。識字率は約80%,義務教育は小学校(6年)までで,5年制の中学・高校への進学率は約44%です。プリント学習と「テレクラス」 そこで,自粛中の学習にはほとんどの学校がA4のコピー用紙に印刷された「自習ガイド」を使用しました。保護者が学校または指定のコピー店まで取りに行き,期限までに課題のプリントを学校に提出します。また,登校する児童・生徒が少なかったことを受け,7月1日から政府系テレビで「テレクラス」と呼ばれるテレビ授業の放映が始まりました。各学年1日わずか2時間ですが,自習よりも効果的だと好評。地方にはテレビもない家庭もありますが,ラジオでも同時放送されました。 こうした状況がある一方で,裕福な子弟が通う私立校では,ネットを通じた授業が行われています。多くの学校では,WhatsAppやGoogleClassroomなどのウェブサービスを使って,自習ガイドの送付や事務連絡を行っています。手続きは保護者を通して行われるため,以前と比べて保護者が子どもの学習により積極的に関わるようになりました。 7月下旬から新学期が始まり,もともと期間限定だった「テレクラス」は終了。しかし,新型コロナウイルス感染者は依然として増え続けているため,多くの児童・生徒は引き続き登校を自粛しています。教育こそが貧しさから抜け出す鍵なのに,貧しさゆえにままならない。それがコロナ禍にあるニカラグアの現状です。 ニカラグアは,集団免疫を獲得させ経済活動を継続させようという政府の方針のため,ロックダウンは実施されていません。公立学校も休校にならないのですが,感染を恐れて登校させない親がほとんどで,40人学級でも出席するのはわずか2~3人です。 …ということは,「オンライン授業をしていたのか」と思われそうですが,ニカラグアは貧しい国なのでパソコンの家庭普及率はわずか20%ほどで,スマホでインターネットにアクセスできる家庭も約47%。オンライン授業など夢のまた夢です。さまざまな教科の「自習ガイド」 に取り組む。「テレクラス」での学習の様子。体育の授業もテレクラスで行われる。バレーラ 由美子(ニカラグア在住/海外書き人クラブ)ゆみこカリブ海太平洋ニカラグア 13教科の視点 英語特集 コロナ禍を生きる
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