各教科の学習活動や指導方法は,『学習指導要領解説』にかなり具体的に例示されています。これを踏まえつつ,写真が必要な学習活動の場面を想定します。例えば,小学校社会科では,学校周辺の様子を観察したり,スーパーマーケットや農家・工場,消防署を見学したりする学習単元があり,中学校社会科では,地理や歴史での地域調査の学習があります。それらの学習時期に合わせて,児童・生徒役や大人役のモデル,現地のかたにも協力していただきながら撮影していきます。 まずは,時期や場所,シチュエーションを想定しながらロケハンを始めます。野外撮影の場合,Googleマップのストリートビューを使って探すこともできますが,やはり自ら歩いて探すことに尽きるでしょう。必要に応じて取材先や施設管理者の撮影許可を得ます。そうして具体的な「絵」を考えます。場所は安全か,写り込む看板や広告はないか,撮影時刻の陽の当たり方なども確認します。「絵」の要素として,走行中の鉄道やバス,自動車なども入るとよいでしょう。これは,読み取れる情報が増えるとともに,その時・その場所の記録ともなるためです。後に同じ場所・アングルで撮影し比較することで,景観の変化を捉える定点観測の教材となります。 次に,モデルの動きを考えます。例えば,子どもが農家のかたに話を聞く場面では,実際の学習場面と同じように,子どもたちにインタビュー係,撮影係,メモ係などの役割を分担させます。その際,農家のかたと子どもたちは相手に正対するのではなく,フォトグラファー側にやや向き合うようにします。現実のインタビューの対面角度とは少し異なりますが,両者の表情をよく見せることができます。また,自然光による撮影では,時間帯による陰影のコントラストの変化や,木立が落とす木漏れ日と影などにも注意します。教科書余滴 ~野外撮影の愉しみ~「絵」をつくる 野外撮影は天候に左右されます。天気予報をもとに,晴天をねらって撮影日時を判断しますが,急なゲリラ豪雨や強風などに遭遇することもありました。 ある年の年中行事「どんど焼き」を取材した日は,朝から小雪が舞っていました。降り始めは乾いた雪であったものが水気を含む雪に変わり,撮影している間,足元に浸水し指先の感覚が消えていくようでした。シャッターチャンスを待つ間も,雪とみぞれは強まり,集められた門松や注連縄などが湿ってなかなか着火せず,地元の子どもたちも集まってきません。ようやく現れた参加者は,自宅の正月飾りや書初めの毛筆作品などを,どんど焼きの炎の中に投げ入れていきます。すかさずシャッターを切りました。撮影が終わるなり,寒さに耐えきれず帰路につきました。そのころには大雪で,路上には立ち往生したり放置されたりした車が連なっていました。結局,その日は電車も運休となり,日帰りの予定が寒さの夜を明かすことになりました。 当日はいわゆる「爆弾低気圧」によって大雪となり,交通網が大きく乱れた日でした。偶然とはいえ貴重な体験であり,こうした予期せぬ展開も含めて野外撮影を楽しんでいきたいところです。忘れがたい撮影モデルの子どもたちにポーズを指示するみぞれと雪の降る「どんど焼き」教科書作成の現場から社会18 教科書作成の現場から 社会
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