WITHコロナ社会での道徳科の意味「公共の場でのマナー」について 考える(2年生)道徳コロナ禍の社会における道徳科の役割の視点教科鳥取市立世紀小学校教諭 木原 一彰きはらかずあき コロナ禍の社会において,日常生活のあり方を見つめ直す「新しい生活様式」が提唱されています。学校現場では,手洗いやうがい,マスクの着用やソーシャルディスタンスなど,日々の生活の中で留意すべきことについて,感染の未然防止を徹底するために,子どもたちに対する指導や指示が多くなりがちです。こういった状況だからこそ,道徳科の学習で少し立ち止まって考える時間をとることが大切だと考えます。 2年生の教科書に「みにつけよう れいぎ・マナー」という折り込みページがあります。このページは,公共の場や学校でどんなことに気をつけて過ごせばよいかについて考えることができるように構成されています。レストランや図書館,職員室など,具体的な場面をもとに,自分だけでなく周りの人たちと気持ちよく過ごすために必要なマナーについて,子どもたちが意見を交流させることで,「コロナ禍の社会や学校生活で必要なマナー」を多様に考え,実践しようとする意欲を培うことができるでしょう。 大切なのは,子どもたちの間に広がっている新型コロナウイルス感染症への不安を,丁寧に解きほぐすことです。安心して生活できる環境を整えるために,教科書教材を活用したいものです。 コロナ禍の社会は,何が正解なのかがわからない状況の連続といってよいでしょう。私たちがこれまで「学校での日常」と考えてきたことが,きわめて厳しい制約の中でしか実施できないという現実に向き合う日々が続いています。正解など存在しないのかもしれないという絶望感すら漂う状況の中では,社会構成上不可欠な要素である人との関わりに潜んでいたさまざまな生きづらさが顕在化します。 相互理解のためのコミュニケーションを考えたとき,他者と相対して話をするという行為は,言葉以上に伝わるものがたくさんあります。表情やしぐさ,語気などから得られる言外の意図とでもいうべき情報は,正しく相互理解を図るための重要な要素だといえます。だからこそ,閉塞感しかない社会の中で,直接的なコミュニケーションを封じられたとき,人は自己の価値認識を絶対化し,それに合わない他者を排除する傾向が顕著になります。 この状況は,学校教育を中心とした子どもたちの生活場面でも,日常的に起こりうることです。ほんの少し咳をしただけで厳しい視線が向けられたり,家族が病院関係者だというだけで病気の感染を疑われたり,ソーシャルディスタンスと称して仲間はずしを正当化したりするなど,具体例はいくつもあげることができます。 このような状況だからこそ,子どもたちがコロナ禍で陥りがちな視野狭窄から脱するために必要な判断力や心情・態度などを,子どもたち自身が見いだすための助けとなる道徳科の時間を構想することは大きな意味があると考えます。10 教科の視点 道徳特集 コロナ禍を生きる
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