「小学教科通信」特別号
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金子晴恵先生。2002年より発達障碍児のための学習指導教室「アンダンテ西荻教育研究所」を主宰。発達障害などの子どもたちの学習指導,親や教師の相談等に携わる。『はるえ先生とドクターMの苦手攻略大作戦』(教育出版 2010年)。お悩み相談はるえ先生の音読が極端に苦手なAさんへの指導について。国語の授業では,さまざまな形で音読の機会を設けていますが,Aさんにとっては読む練習になるどころか,むしろ苦痛を与えてしまっている気がします。おっしゃる通り,読みが困難な子は,みんなの前で緊張のなか必死で読んでも内容なんか頭に入ってこないでしょうし,それを繰り返したところで上手に読めるようにもなりません。そもそも,内容理解を促すために読むことと,流暢に読む練習としての読むことは,性質が異なります。Aさんの場合は,内容理解には本人に読ませるよりも,誰か(何か)が読み上げるのを耳から聴いて情報を得るサポートが有効です。一方,流暢に読むための練習は,教科書では難しい場合も多く,その子に適した読み教材を使う必要があります。なぜなら,「読む」とは,頭の中で一文字ずつ音に置き換えるのではなく,ひQAとかたまりの文字列を単語として捉え,記憶の中から自分の知っている言葉を引っ張り出すような作業だからです。その子の語彙力にマッチしていて,負担なく読める文字量に調整した読み教材で練習させましょう。 そこで提案です。「図書」の時間を有効活用できないでしょうか。図書室の片隅に,先生と個別に練習するコーナーをつくります。5分程度,1ページだけでもよいです。必要に応じて,自分の力量に合った本選びも手伝ってあげましょう。自分で音読させる以外にも,先生に読んでもらいながら字を指で追う,先生と一緒に読む,といった練習も効果的ですよ。授業中に何かと道具箱からのりやセロハンテープを出していじってしまうBさんに,学習に使わないものは出さないよう指導したところ,今度は授業中にノートに恐竜の絵ばかり描くようになってしまいました。やめさせて授業に集中させたいのですが…。授業中にノートに堂々と絵を描いているBさん。先生から見ると気になりますよね。よそ事していないで,集中しろと言いたくなるのもわかります。そういう子って2つ理由が考えられます。ひとつは、授業がわからない,つまらないから,他のことに没頭している場合。もうひとつは「集中を維持するために」やっている場合,です。両者を見分けるのは簡単で,「よそ事をしていても授業は聴いている・理解している」か否か,です。前者の場合,子どもの興味を引くための工夫とわかりやすい授業に全力をあげると同時に,今QAしなければならないこと,注意を向けるべきことに気づいてもらうための優しい声がけや合図をしてあげてください。後者の場合は,先生の理解と配慮が必要です。集中が途切れやすい子はむしろ適度な「ながら作業」のほうが覚醒水準を維持できることがあります。それで無意識に何かをいじっていたり絵を描いていたりするので,明らかに授業や他の子の学習を妨害する行為でない限りは大目に見てあげてほしいところです。更に,その能力や興味をうまく生かして授業に参加させられれば言うことなしですね!はるえ先生プロフィール16 はるえ先生のお悩み相談

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