虫の声たという指摘が,古くは江戸時代からあって,定説になっているようですが,今でも異を唱える学者もいるようです。 いずれにしても,微妙な季節の変化を指す言葉になったり,『源氏物語』や『枕草子』などでも,その声が愛でられたりした長い愛着の歴史を見ると,私たちの情緒に深く関わっていることを実感させられます。 この夏,コオロギを庭に放して声を楽しもうと購入店を探したところ,ペットのトカゲの餌として売られていると聞きました。江戸時代の「虫売り」の文化はとだえ,わが国の愛玩物の変化をつくづくと感じさせられたものです。 せめてゆく秋を惜しみながら,擬声語の学習などを通して,虫の文化を子どもたちと楽しみたいものです。 生活科で秋といえば秋探しですよね。野原に出かけて落ち葉やどんぐりを集め,友達と遊んだり,新たな気付きを得たりする大切な学習活動の一つです。 ここでクイズです! どんぐりって何だと思いますか? 答えは木の実です。正式にはブナ科植物の「堅果(けんか)」で日本全国には20種類あまりが知られています。果実(種は皮一枚隔てた中身)なので当然植えると芽が出ます。「それを植えると芽が出るよ」と伝えると子どもたちは突然どんぐりを大切に扱います。子どもたちにはどんぐりは木の果実であること,そして芽が出て木になることを伝えてあげましょう。 またまた,ここでクイズです! どんぐりにくっついているおわん型のものは何でしょうか? 子どもたちはこれをどんぐりの「帽子」と言います。しかし,「どんぐりの頭はどっち?」と聞くと多くの子どもはとんがっている方を指さします。とんがっている方に帽子はありません。「あれ?パンツだ!」 そうです。「パンツ」なのです。パンツを脱がすと少し白いおしり(学術的な部位の呼び名も「尻」)が現れ,まさにパンツです。正式には「殻斗(かくと)」と呼ばれ,枝から栄養を送ったり,実が傷つかないように守ったりする役割をしています。昔の人たちは「はかま」とも呼んでいたそうです。イラスト:カツヤマ ケイコどんぐりの殻は帽子なの!?パンツなの!?どんぐりの帽子かわいいね!私もほしいな♡こんな帽子それ,帽子じゃなくてパンツだよじゃあいらないやっ国語生活教育出版教育研究所主任研究員 今村 久二いまむらひさじ学習院大学教授 飯沼 慶一いいぬまけいいち 秋も深まり,虫の声が心にしみる季節です。二十四節気の一つ,七十二候の寒露の末候「蟋蟀在戸<きりぎりすとにあり>(第51候)」は,10月18~22日頃を指します。 「蟋蟀」は「コオロギ」とも「キリギリス」とも読みますが,この「蟋蟀」は,かつて「コオロギ」だったものを宝暦の改暦を経て「キリギリス」と,その読みを変更したという話を聞いたことがあります。 文部省唱歌『虫のこえ』に,「キリキリ キリキリこおろぎや」という歌詞がありますが,こちらは逆に「キリギリス」を「コオロギ」に変更したものだと聞きました。鳴き声をコオロギの声に合わせたというのが理由の一つだそうですが,しょせん人の聞きなしによる文字化ですから,少々首をひねります。 同じように,マツムシとスズムシも名前が逆転しほうれき季節教科Autumn Column20 季節×教科 国語・生活
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