「小学教科通信」特別号
6/24

コロナ禍における学校の現状1具体的な課題の確認と共通理解2今後,各学校が重視すべき取り組みについて3コロナ禍における学校の課題と今後の取り組みについて一般財団法人 教育調査研究所 評議委員・研究部長寺崎 千秋てらさきちあき提言コロナ禍における学校の現状1具体的な課題の確認と共通理解2今後,各学校が重視すべき取り組みについて3寺崎 千秋 コロナ禍により全国規模の休校は約3か月に及んだ。この間の教育課程未実施を取り戻すため,各学校では,国の新型コロナウイルス感染症対策や学校の教育活動再開に関わる諸通知およびこれらに関するガイドライン,各教育委員会の方針や指導に沿い,実態に応じて,教育課程の見直し再編を行った。 多く行われたのが長期休業の短縮,土曜日授業の実施,学校行事の中止や縮小,学習活動の重点化や一部家庭学習の実施等々であった。これらにより時数を確保し,未実施の部分にあてて教育課程を再編し,学校再開後に実施しているところであろう。 一方で学校再開後,子どもたちや教職員にとって窮屈な学校生活が始まった。「学校の新しい生活様式」が示され,基本的な感染症対策の実施と,集団感染のリスクへの対応として,密閉,密集,密接の回避が重視された。さらには子どもの心の面,体力・健康面,登下校の安全確保などについても十分に配慮することが求められた。 これらの状況への対応が,常に求められていることを改めて確認したい。コロナ禍における学校の現状1具体的な課題の確認と共通理解2今後,各学校が重視すべき取り組みについて3コロナ禍における学校の課題と今後の取り組みについて一般財団法人 教育調査研究所 評議委員・研究部長寺崎 千秋てらさきちあき提言●具体的には主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善について,3密を避けながらどのように進めるか,どのような工夫が必要か。●障がいのある子どもへの,状態に応じたきめ細かい指導や配慮がいっそう必要となっている。●子どもどうしが距離をとることで互いの関係性が希薄となったり,いじめが増えたりすることが心配される。相談体制のいっそうの確立が必要となる。●学習面では,個々の子どもの実態もあるが,家庭環境の実態等により,学校から出された宿題や課題にしっかりと取り組んだ子どもから,ほとんど未実施の子どもまでかなりの差が生じている。●休業中の生活習慣の乱れ(寝不足,ゲームづけ),運動不足による体力の低下,ストレスの蓄積,活動意欲の低下など,健康面での課題,心の面での心配や課題がみられる。●保護者の仕事の状況や家庭環境により,虐待やそれに近い状況に追い込まれている子どももみられる。●医療関係者などへの偏見や差別の問題が起きている。●教職員が教育課程の実施だけでなく感染対策への対応に追われ,ストレスを抱えたり,疲労が蓄積したりすることで,万全な環境で子どもたちの教育にあたれない状況が生じている。●地域や学校により差がみられるが,休業となった3月から5月の3か月間の教育課程の未実施や学習の遅れが生じている。学校再開後にどのように取り戻すか。●小学校では,令和2年4月から新学習指導要領に基づく新教育課程が全面実施となるはずだったが,新型コロナウイルスへの対応が続くなか,全面実施をどのように進めるか。といった課題がある。また,家庭においては,といった課題がある。これらの状況には個々の家庭環境による差が大きいことがうかがわれ,教育格差として問題になっている。他に次のような課題もある。 教育課程の見直し再編とその実施にあたっては,具体的にどのような課題があるか確認し,共通理解を深める必要がある。学校においては,6 提言特集 コロナ禍を生きる

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る