このように課題山積のなかでどのように教育課程を実施していくべきか,新学習指導要領で重視しているカリキュラム・マネジメントを視点にし,三つの側面から考えてみる。①教科等横断的な教育課程の再編成と実施 教育課程の未実施や学習の遅れを取り戻そうとして,学習面にばかり目がいきがちの状況にある。教育は知・徳・体のバランスのよい育成が重視されている。知にばかり目がいき,徳育や体育・健康教育をおろそかにするようなことがあってはならない。特に,休業中に報告されている体力や健康面,心の面での課題に関する子どもたちの実態をしっかりと把握し,これに応じる教育・指導を手厚く行うようにする。そのため,これらに関する教育内容の相互の関連を図り,意図的,計画的,組織的な指導を行うようにする。 新型コロナウイルス感染症およびその対策に関する正しい知識・理解が確実に身につくようにする。自分の身を守るだけでなく皆の身を守ること,さらには偏見や差別を生み出さないためにも,正しい知識・理解を身につけ適切に行動できるようにすることである。そのための指導は,体育の保健や学級活動などを核にし,関連する各教科等の内容との連携を図り教科等横断的に取り組むようにする。 病院関係者や福祉施設関係者等々への偏見や差別が行われている実態,また,学校においても,今後,いじめや差別が生じる可能性が高いと予想されていることなどから,これらに対応する教育指導を継続したり先取りしたりして行う必要がある。道徳科での要となる指導や総合的な学習の時間の探究課題として,自分たちの行動を考え実践する活動,学級活動でどう考えどのように行動するかを話し合う活動など,相互に関連づけて教科等横断的に取り組むようにし,子どもたちの人権感覚,人権意識を高めて実践活動につながるようにする。②PDCAサイクルの確立による 教育の質の向上 主体的な学びの実現に向けて,学習への興味・関心と学習の見通し,そして振り返りが重視されている。3密を回避するなかでこれらをどのように成立させ発展させるかが重要なポイントとなる。教材を重点化し興味・関心を高める提示と発問の工夫,その後の学習活動の重点化,家庭学習に移行する学習活動との関連などの組み合わせ等を工夫して,子どもの主体的な学びを形成し発展させるようにする。 対話的な学びでは,子どもどうしの対話による協働の活動が制限される。話す・聞くの音声言語から書く・読むの文字言語を中心にした対話の工夫が必要となる。この機会に書くことを重視し,じっくり考えて書き,それを丹念に読み合う活動により,対話を深め自己の考えを広げたり深めたりすることができるようにする。 教師は子どもたちとの対話を一問一答にせず,何回かのやり取りのある対話となるように工夫し,他の子どもがそれを聴きながらじっくりと考えるような場となるようにする。先哲との対話においても先哲の考えに対して自分の問いや考えを書くことを重視する。また,対話の内容を黒板等に掲示して考え,また,対話するといった板書の使い方を工夫する。 深い学びでは,3密を回避するなかでは特に学習状況の自己評価や相互評価を重視する。習得・活用・探究の学びの過程,学習の課題やめあて,計画・見通しなどについて,評価基準やルーブリックなどを基に自分の学びがどう変わったか,深まったかを評価できるようにする。教師は子どもが学びの意義や価値を実感できるように評価結果を伝えるようにする。③教育内容と地域等の資源との関連,活用 教育活動に必要な人的・物的資源を教育内容と関連させることは,資源の活用が単なる学習活動に終わらずに,教育内容を踏まえて,子どもたちの資質・能力の育成に効果的につながることを求めている。新型コロナウイルス感染拡大により,地域等の外部資源の活用がストップしているのが実態であるが,今後の関係者相互の工夫により,つなげていきたい。 地域の人材との関わりでは従来の直接的な対話等による活用に限界があるなかで,手紙や電話,ファックス,ビデオ,テレビ電話等々による対話の工夫が必要になる。また,環境が整っていれば,オンラインによる対話等も試みたい。 校内の施設・設備の消毒,給食の配膳,教室やトイレの清掃,個別学習の支援等々,地域の人々や保護者からの応援が多く見られる。非常時であるので,感染への配慮をしながら可能なところから支援してもらうようにすることも必要であろう。今後,各学校が重視すべき取り組みについて3 7提言特集 コロナ禍を生きる
元のページ ../index.html#7