このような試みによって今まで長唄を聴いたことのない方にも聴いていただき「洋服姿での演奏に新鮮さを感じた」「アニメーションによって長唄にとても親しみを感じた」等のご意見をいただき,音楽で皆さまに楽しんでいただける事こそ私たち演奏家の価値であると改めて感じた期間でもありました。 さまざまな制限の中で「何ができるか」「どうやったらできるか」を模索し続ける日々ではありましたが,その一方で世阿弥の『風姿花伝』に「秘すれば花」とあるように,100%でないものを闇雲にやるだけでなく,いつ舞台があってもよいように研鑽を積むことの大切さ,そして当たり前の事ですが,劇場や音の匂い,太鼓の振動は映像でお伝えする事ができないように,生の舞台の価値,一期一会の感動の大切さも改めて実感しております。 多くのものを奪ってしまったコロナ危機,そして目まぐるしく変化するデジタルの時代だからこそ,目の前の人とのご縁や繋がりを大切に音楽に向き合い,改めて一歩一歩丁寧に生きていく事の大切さを教えてもらったような気がいたします。 一日も早く穏やかな日常が戻り,皆さまと劇場でお会いできる日を心待ちにしております! さらには学校が休校となり,卒業式,入学式もできない子どもたちのために何かできることはないかと,2017年に私が出版した音源付教材『三味線でうたおう!子どもと楽しむ長唄童謡』の中から10曲を抜粋。新たにアニメーション制作を依頼し,解説,字幕付きでYouTubeに公開いたしました。長唄,和楽器の入門編として,ぜひ学校の授業でもご活用いただけたら幸いです。長唄童謡「舌切雀」 (野口雨情 作詞 四世杵屋佐吉 作曲)から長唄童謡「飴屋の笛」 (童謡研究会 作詞 四世杵屋佐吉 作曲)から また同世代の演奏家たちとは『リモート演奏』という形で,今年お花見に行けなかった方に少しでも桜を感じていただきたいと,元禄時代の豪華絢爛な花見の様子を描いた長唄の名曲『元禄風花見踊』を総勢19名で,また感染予防を呼びかける手洗いソング『ぴかぴか手洗い』では,演奏家の手洗い動画も添えて公開いたしました。「元禄風花見踊」唄方7名,三味線方7名,囃子方5名によるリモート演奏の場面「ぴかぴか手洗い」 唄方 杵屋佐喜,三味線方 杵屋五助,囃子方 望月左太寿郎による手洗い実演の場面杵屋佐喜 1983年東京生まれ。父は江戸時代より続く長唄佐門会家元・七代目杵屋佐吉。6歳で国立大劇場にて初舞台。長唄を人間国宝・杵屋佐登代,今藤尚之,三味線を祖父・五世杵屋佐吉,田島佳子に師事。玉川大学文学部芸術学科,声楽専攻卒業。声楽を藤原歌劇団テノールの市川和彦,ピアノ・作曲をピアニストの仲野真世に師事。第11回アジアクラシック音楽コンサート新人賞受賞。 2002年父の前名である佐喜の名を三代目として襲名。現在長唄の唄方として全国の邦楽公演,歌舞伎,日本舞踊会,NHK『にっぽんの芸能』等に出演多数。『市川海老蔵NY・カーネギーホール公演』『平成中村座スペイン公演』ほか海外公演への参加も多い。母方祖父は映画俳優の木村功。これからのこと新たな試み①長唄でカレーライス?新たな試み②長唄で童謡!新たな試み③リモート演奏で「元禄風花見踊」!?演奏家としての仕事の現状音楽教室についてこれからのこと新たな試み①長唄でカレーライス?新たな試み②長唄で童謡!新たな試み③リモート演奏で「元禄風花見踊」!?演奏家としての仕事の現状音楽教室についてこれからのこと新たな試み①長唄でカレーライス?新たな試み②長唄で童謡!新たな試み③リモート演奏で「元禄風花見踊」!?7教科の視点 音楽特集 コロナ禍を生きる
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