「小学教科通信」特別号 ウェブ版
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スピード重視!何事も素早く整備~オランダの場合~コロナ禍における海外教英語の視点教科倉田 直子(オランダ在住ライター/海外書き人クラブ)くらたなおこ 一部では教師がライブで授業を行う方法もとられたようですが,筆者が見聞きする限りは,教育ソフトウェアやアプリを使用した自宅学習が多かったようです。ただし,勉強内容に疑問などがあれば,児童はチャットで教師に質問できるという態勢もとられていました。教師から児童あてにも毎日メールが届き,孤独を感じさせないための気遣いが伝わってきました。 更に政府が運営をサポートする,教育者向けの自 オランダは,2020年夏の統計によると人口約1,742万人,面積は九州と同程度の小国。そのため,何事にも素早い対応がなされます。世界的なコロナ禍にオランダも巻き込まれましたが,その性質が危機対応でも遺憾なく発揮されました。その一端をお話させてください。 オランダでコロナウィルス感染者が最初に発覚したのが2月下旬。政府は3月15日の夕方に,ロックダウンに伴う義務教育の休校を翌日から実施すると発表しました。突然の通告にも関わらず,学校はすぐに自宅学習の体制を調整。報道によると,多くの小学校が2~3日後にはインターネットを使った自宅学習に切り替えたのだそう。 実はオランダは校内のICT化が進んでいて,大半の小学校で平時から電子黒板やタブレットを使用した授業が行われています。使い慣れている教育ソフトウェアをそのまま自宅学習でも使用したため,ほとんどの教師や児童も問題なく自宅学習に移行できたようです。◀Microsoft Teamsで担任の教師やクラスメイトとの会話を楽しむ小学生の様子。(写真提供:Kim Veldema)◀登校再開後,校庭前に「保護者はここでキスをしてお別れ」の案内が貼られた。◀小学校の教室に「消毒液,ハンドソープを常備すること」という指針が。宅学習のノウハウをシェアするウェブサイト(https://www.lesopafstand.nl/)も開設され,教育者間で様々な知見がシェアされました。そういった影響を受け,自宅学習開始から数週間後の4月上旬には,国内の多くの小学校でMicrosoft Teamsを使用したホームルームやイベントもスタート。必要な知見が必要な場所に素早く届くため,休校期間中も常に勉強方法などが更新されました。 そして5月上旬には,小学校のクラスを半分に分けた分散登校を政府が決定。隔日登校や午前午後交代など,実際の運用は,学校ごとに実施しやすい方法を選択できました。そこで大規模なクラスターが発生しなかったという実績を受け,6月8日から通常登校が再開。ただし「新コロナルール」が生まれ,多くの学校で「保護者は校舎内の立ち入り禁止」「教室にハンドソープや消毒液を常備する」などの規制ができました。しかしオランダ人の順応は驚くほど早く,保護者も児童も粛々と,それでいて明るくルールに従っているように見えます。仮に第2波が来ても,またオランダは素早く対応していくのだろうと感じます。12教科の視点 英語特集 コロナ禍を生きる

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