育事情レポート教科書なし,家庭でできることに挑戦 ~ニュージーランドの場合~りん みゆき(ニュージーランド在住ライター/海外書き人クラブ) コロナ禍における,海外の小学生の生活はどのような様子だったのでしょうか。オランダとニュージーランドから小学校の取り組みや子どもたちの生活についてのレポートをお届けします。 南半球に位置する人口約500万人,羊の数が人よりも多いニュージーランドは,自然に恵まれた,面積が日本の4分の3ある島国です。小学校は5歳の誕生日を迎えた翌日から入学することができるので,入学式はなく,通い始める時期もバラバラです。小学校は4学期制で,新学期は真夏の1月下旬に始まります。 コロナ禍では感染者が200人強,死者がゼロの時点で早いうちに国全体がロックダウンし,国内の新型コロナ感染を根絶した国として称賛されました。3月25日からロックダウンに突入し,学校は約2か月閉鎖されました。 ハミルトン市に住む小学4年生の双子,ミラさんとブライリーさんは,毎週小学校から親にメールで送られてくる課題「チャレンジ」を家でこなしました。教科書やプリントを使う教科的なものではなく,学校の教育方針である「創造力を形にする」に基づき,さまざまな課題にまさに「挑戦」する自由研究的なものです。 「チャレンジ」には,「アート」「キッチンでできること」「創造する」「体を動かす」「リラックスする」「情熱プロジェクト」等のカテゴリーがあり,その内容は毎週変わりました。 これらの「チャレンジ」に対してミラさんとブ 「チャレンジ」は全部のカテゴリーをこなしても,一部だけでも構いません。もしできなかったら無理にする必要はありません。家庭環境や心の状態でできないこともあり,児童の心と体の健康を最優先としています。 その後,5月18日から学校が再開しました。感染者がほぼゼロの状態が続きましたが,オークランド地域では市中感染が確認され,8月12日から8月30日まで自宅学習になりました。ハミルトンを含め,他の地域では通常通りでした。 ニュージーランドでは,コロナ禍で首相が呼びかけている“Be Kind”(優しくあれ),“Kia Kaha”(強くあれ)の姿勢が国民に浸透しています。学校でも,児童や家族に寄り添い,心を穏やかにして,みんなで一緒に困難に立ち向かっています。◀「キッチンでできること」の課題で,家族のためにデザートを作っている様子。窯でマシュマロを溶かしています。◀「創造する」の課題で,キラキラのラメグリッターを使って,ボードゲームを考案・作成している様子。ライリーさんが実際にどのように取り組んだかを紹介します。「アート」では自分が好きな画家を調べてその人と同じ絵を描き,「キッチンでできること」では家族のために前菜・メイン・デザートの3種類の食事を用意しました。「創造する」では家族で遊べるボードゲームを考案・作成。「体を動かす」では1日20分間自分が選んだ運動をし,「リラックスする」では毎日3分間瞑想し,感謝することを3つ書きました。そして「情熱プロジェクト」では興味があること,もっと知りたいと思うことについて調べました。インターネットや本で調べたり,誰かに尋ねたりしながら課題をこなし,成果物は写真を撮ってメールで先生に提出しました。オークランドハミルトンウェリントン13教科の視点 英語特集 コロナ禍を生きる
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