国語東京学芸大学附属世田谷小学校教諭 大島 静恵withコロナ時代の国語教育の視点教科おおしましずえ 4月7日に緊急事態宣言が出され,3月から続く休校が延長された。誰も経験したことのない状況下で,子どもたちや保護者のかたはもちろん,教員自身も不安を抱えながら生活する日々だったと思う。しかし,そのようななかで私たち教員は,何ができるのかを模索した数か月だったのではないだろうか。 文部科学省より「新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業等に伴い学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)」が出され,プリントなどの課題の他にICT等も活用して家庭学習を支援することや,文部科学省の「子供の学び応援サイト」等の活用が推奨された。とはいえ,ICT環境が万全に整っていた学校は少なかったのではないだろうか。しかし,できない理由をあげているだけでは,前に進むことはできない。「今ある環境でできることから始める」「〇〇をしたいから,それを実現するための環境や方法を探る・つくる」という思いで,スタートをきった。 休校期間は,学習を進めることはもちろん重要であったが,それ以上に子どもたちが求めていたことは「人とのつながり」ではなかっただろうか。休校になったばかりの頃は,自分の自由な時間を過ごせると喜んだ子どもたちもいたことだろう。しかし,時間が経過するにつれて,子どもたちは,先が見えない不安と,人と話すことができない状況にストレスや寂しさを抱えるようになってきていた。 私が担任するクラスは5年生である。4月当初,子どもたちはクラス替えがされているのに新しい友達とはまだ会えていなかった状況で,まずは,オンラインホームルームの時間を大切にした。友達の顔を見て会話をすることで,安心感が生まれる。コミュニケーションを図る場として大事な機能を果たしていた。オンラインホームルームは,子どもたちが相手に伝えること以上に,相手のことを聴く姿勢(マインド)をもてるように意識して行った。国語科の授業において対話することの意味は非常に大きいからである。対話には聴き合うことが不可欠であり,聴き合うためには良好な人間関係も重要な要素の一つとなる。オンラインホームルームは,対面ではないからこそ,なおさら,相手に関心を向けて,一人一人の発言を聴こうとする姿勢が問われると同時に,その意識が育まれるよい機会になると捉えていた。オンラインは一方通行のやりとりにとどまってしまうという声を多く耳にするが,「双方向の学び」の可能性を探るべく「授業の土台づくり」をする思いで取り組んだ。授業は,人間関係を構築する場でもあるからである。 通常の対面授業であっても,オンライン授業であっても,国語科の授業で大事にしたいことは変わらない―対話することである。自分の意見を相手に伝え,他者の意見を聴くことで自分の考えに立ち返り,自分の考えを広げたり深めたりすることができる。他者と対話し,自己と対話する。その時,学びの対象となる学習材(もの・言葉)や環境(こと)とも対話する。そこに言葉を通じて学び合う国語の授業の価値があると考えている。1.はじめに 2.「授業の土台づくり」のチャンス 3.国語科の授業で不易なもの 4.終わりに 1.はじめに 2.「授業の土台づくり」のチャンス 3.国語科の授業で不易なもの 4.終わりに 1.はじめに 2.「授業の土台づくり」のチャンス 3.国語科の授業で不易なもの 4.終わりに 2教科の視点 国語特集 コロナ禍を生きる
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