「小学教科通信」特別号 ウェブ版
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図1 リトマス試験紙の課題図2 月の満ち欠け説明器の作成 第6回では「月の満ち欠け」を学習させた。筆者が開発した「月の満ち欠け説明器」の材料を郵送し,それを児童に作成させ,実際の月の満ち欠けを観察させた(図2)。説明用のスライドには,教師の音声を入れて説明し,児童はそれを聞きながら学習できるようにした。提出状況はよかった。 第7回は,火山の学習だが,ただ火山の資料を送って児童にノートにまとめさせるという課題ではなく,児童が興味をもちそうなテーマである「ディズニーシークイズ」という形式にし,多くの音声付きスライドを視聴させた。途中に選択肢のあるクイズを挟み,それを解かせることで視聴したかどうかを確認した。 私が得た結論は,オンラインで児童に課題を与えるだけのいわゆる「プリント学習」は,児童にとっては単なる宿題であって,授業としての効果が期待できないということだ。教師が可能な限り高品質な教材を児童に与えないと,それは授業にはならない。また,高品質な教材を与えたとしても,自ら学習できる児童とそうでない児童とでは大きな差が生じる。YouTubeなどで児童は動画に慣れている。教師がどんなに苦労して高品質な教材を作成しても自ら学ぶ力のない児童は聞き流すだけであろう。 また,テレビなどで,Zoomなどの分割画面に児童たちの顔が映され,オンライン授業をしているというニュースをよく目にした。しかし,それで授業が成立しているのかは疑問が残る。確かに,教科によっては少人数で議論する場面などは有効であるかもしれないが,自然の事物・現象を対象とする理科教育では,果たしてこれだけで代用できるのだろうか。 私は今回のコロナ禍で,むしろ学校教育で行われている現時間,現空間で行われる直接経験の授業の重要性が明らかになったように思う。学校とは,もともと自ら学ぶ力のない子供をある意味強制的な枠組みの中に入れて,その自ら学ぶ力を醸成させる場ではないかと思う。 コロナ禍がいつまで続くかはわからない。オンライン授業は今後も続くかもしれない。そのためには,オンライン授業の実践評価研究が喫緊の課題である。また,アプリの開発と導入やインフラなどの整備,教師へのサポートなど問題は山積している。理科教育においてもオンライン授業の有効な活用方法を早急に構築すべきである。もしかしたら,未来の理科教育は,直接経験をする場面を学校で行い,間接経験をする場面は内容によってはオンラインで行うという形となっていくのかもしれない。 第8回も同様に,筆者のハチオウジゾウ発見の話の音声付きスライドを視聴させ,地層の学習をさせた。音声付きスライドが78枚と膨大になり,作成にも多くの労力が必要だった。一部の児童は熱心に視聴し反応もよかったが,反応の差は大きかった。 第9回からは,分散授業が始まったので,「てこ」の実験だけを学校で行い,そのまとめを課題とした。ここからは,音声付きファイルに合わせて自作動画も加えることで,あたかも実際に理科室で授業を受けているような動画を配信するようにした。書を自分で読んでノートにまとめることや,自作のワークシートを送り,それに答えさせるものにした。しかし,他教科からの課題も多くなり,急に提出状況が悪くなった。また,提出内容も個人差が大きくなった。教師間でも情報を共有し,児童の中に課題疲れという現象が起きていることが示唆された。 そこで,第5回では,家でもできる実験ということで,リトマス試験紙を赤青20枚ずつ郵送し,それを使って家庭にあるさまざまな液体の液性を調べさせた。実験結果を共有したところ,多くの児童が熱心に実験を行っていた(図1)。1.はじめに2.オンライン授業の方法4.おわりに3.授業の実際9教科の視点 理科特集 コロナ禍を生きる

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