掲載俳句の選定 従来,近代の俳句を掲載してきましたが,新版ではまず堀本先生による俳句4句の鑑賞文から始まり,続いて堀本先生の選定による15句の近現代俳句を掲載する構成にしました。はじめに候補として堀本先生からご提案いただいた俳句はおよそ50句。どれも魅力的でしたが「中学生の感度・感性に訴えかける句」「これまで教科書で紹介してこなかった現代の俳人の句」「生徒が鑑賞文を書きやすい句」といった観点から検討を重ね,絞りました。 生き物や自然に題材をとった句が多く選定されており,自然豊かな土地で少年時代を過ごされた堀本先生ならではの着眼点が光ります。 また,自由律俳句といえば尾崎放哉と種田山頭火が有名ですが,新たに,住宅顕信という夭折の俳人の句を初めて教科書に取り上げました。教科書作成の現場から紙上句会 新版では「句会」について,とある中学校の国語の授業中の1コマという設定で,堀本先生の主宰する句会さながらに,臨場感たっぷりに書き下ろしていただきました。文章中,作者と読み手との間に句の解釈に対するずれが生じる場面がありますが「ずれがあるのはあたりまえ。批評や創作への心理的ハードルを下げてほしい」というメッセージがこめられています。中学生に楽しんでもらえる俳句を 俳句教材へのご執筆にあたり,堀本先生は,「やっぱり,中学生の皆さんに『俳句ってなんだかおもしろそう!』と感じてもらえるような内容にしたいと思いました。どうしても,俳句は堅苦しくて古臭いイメージがあると思うので,そのイメージから抜け出せるような形で俳句の豊かさや楽しさを伝えられないかなと。自分が中学生だったら,という気持ちで書いた部分もありますね。そこを授業で受け取ってもらえれば本当にうれしいことです。」とおっしゃっていました。 本教材が,生徒にとって俳句の新たな一面を発見する一助となれば幸いです。令和3年度版『伝え合う言葉 中学国語』では,俳人の堀本裕樹先生を執筆者にお迎えし,3年生の俳句教材を大幅にリニューアルしました。その制作過程を一部ご紹介します。1974年 和歌山県生まれの俳人。著書・共著多数。最新刊『桜木杏、俳句はじめてみました』(幻冬舎文庫)句会の主宰・講師としても活躍し,俳句の楽しさを広く伝える活動を行う。『伝え合う言葉 中学国語3』「俳句の味わい」「堅苦しい」から「おもしろい!」へ~俳句教材の改訂~堀本 裕樹ほりもとゆうきすみたくけんしん16教科書作成の現場から連載
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