「中学教科通信」2021年5月号
5/20

「子どもは使っているうちに自然とICTの操作を覚える」というのは,よい考えではありません。試行錯誤しながら「なんとなく使える」ようになるだけのことで,ワープロで行頭を確実にきれいに揃えるとか,表計算ソフトで関数を使って効率的に計算するとか,データサイズを意識するとか,そういったことは指導する必要があります。一度指導すればずっと使えるスキルですので,適切な発達段階で指導していきましょう。 本学の2年生188名へのアンケート結果では,パソコンが「とても得意」と回答した学生はわずか2.1%で,最も多かったのは「どちらかといえば不得意」で54.3%でした。現在の大学生が,義務教育段階でいかにICTスキルを学んでいないかを示していると思います。新学習指導要領の総則によれば,コンピュータ等の情報手段の基本的な操作の習得は小学校で行うことになっていますし,その後も,技術・家庭や総合的な学習の時間などで学んでいくことになっています。 このような現状を踏まえると,まずは最も土台となる「ICT環境整備」に続いて,学習に向かう姿勢づくりや情報モラル・情報セキュリティといった「学習習慣・規律」に関わる指導が必要となります(図1)。その次に,文字入力やワープロ・表計算4.基本的な操作・情報活用スキルを指導する 新しいことが多くありますので,まずは先生が慣れるところから始めるのが重要です。いきなり授業で使うのではなく,まず業務の中で使ってみましょう。その際, ・試しに,使ってみる ・よかったら,続けてみる ・ダメだと思ったら,やめてみるこれくらい楽な気持ちで,どんどん業務で活用している地域が成功しつつあるように思います。授業で子どもに一人一台端末を活用させる前に,先生自身が職員会議や教員研修で一人一台端末,クラウドをフル活用してみて,そのメリットや限界を身体的に理解することが重要です。 現在のクラウドサービスは,機能が多岐に及んで,使い勝手のよいものが多く,業務でも授業でも同様に使えるくらい完成度が高いと思っています。従来のICTサービスは専門的な部分もありましたので,学校では子ども用ソフトや教育専用ソフトを活用することが一般的でした。しかし,今やスマホなどで子どももICTに慣れてきていますので,一般的な大人用のソフトでも上手に使えます。先生にとっても,わざわざ教育専用ソフトの使い方を覚えて,習熟して,指導法を考えるのは大変です。ふだんから業務に使っているソフトを授業でそのまま使えるのであれば,指導法の研修だけで済みます。例えるならば,子どもの成長に合わせてサイズを変える「バイオリン」から,大人と同じ楽器で最初から練習する「ピアノ」を使う時代になった,3.まずは先生が慣れること。それを授業に生かそうといえます。 子ども用ソフトや教育専用ソフトの活用も効果的ですが,子どもたちが卒業したあとも役立てやすいノウハウを学べるという意味でも,汎用のクラウドサービスをまずは活用してみてはいかがでしょうか。図1 授業でICTを円滑に活用するための基礎的なスキル等メージをしっかりとつかみ,必要であれば従来の実践ノウハウを見直す必要があります。情報活用スキル(情報の収集等の個別的な情報活用スキル)考えるための技法 (順序づける,比較する,分類する等)ICT操作スキル(文字入力,ワープロ,表計算,クラウド等)学習習慣・規律 (学習に向かう姿勢づくり,学校や授業での約束,情報モラル・情報セキュリティ等)ICT環境整備(1)真の一人一台PC,(2)クラウド,(3)安定・安全・安心5デジタル時代の学びのカタチー提言特集

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る