はるえ先生プロフィール金子晴恵先生。2002年より学習支援教室「アンダンテ西荻教育研究所」を主宰。発達障害などの子どもたちの学習指導,親や教師の相談等に携わる。『はるえ先生とドクターMの苦手攻略大作戦』(教育出版 2010年)。お悩み相談はるえ先生の1年生担任です。学級に気がかりな子がいます。落ち着きがなく,授業中ほかの子にちょっかいをかける,集団での活動から外れる,などが頻発しています。発達の専門家に相談するよう保護者に勧めたいのですが,どのように伝えれば理解を得られるでしょうか?「保護者にどう伝えるか」は,学校の先生がたにとって悩みの一つのようですね。保育園や幼稚園の先生は,毎日保護者と顔を合わせて子どもの様子を伝えているので,その延長で話がしやすい気がします。学校の先生はこの土台がないので,ある日突然「ちょっとお話が……」となりがち。保護者は身構えてしまいますし,関係ができていない間柄では前向きな話にはなりにくいですよね。日頃から,その子のよさや成長を共有し,信頼関係を築くことが第一でしょう。 ところで,一昔前に「保護者には事実のみを伝える」という先生がいらっしゃいました。おそらく主観や決めつけで話さないという意QA味だと思うのですが,なぜか曲解されて,児童の“問題点”の羅列で伝えるケースが見受けられます。「おたくの子の困ったところリスト」を親に突き付けるような伝え方は,不信感を与えかねないので,やめた方がよいかと。 私は「伝える」より「聞く」を意識しています。家での様子は? 最近の変化は? と聞いていくと,家庭での姿と共通点があれば「学校でも似たようなエピソードがあって……」,異なる姿であれば「家ではそうなんですね。学校では……」といった感じで話のきっかけをつかみやすいからです。先生と保護者がともに子どもを支えるパートナーになれるとよいですね。コロナの流行,GIGAスクール構想のスタートなど,オンラインでの授業が増えるのではないかと不安です。特別な教育的ニーズのある児童への対応も含め,なにか事前に準備しておくべきことがあれば教えてください。私の教室でも,昨年のコロナ休校時には全ての授業がオンラインとなりました。元々パソコンやタブレットには音声読み上げ,動画解説,スケジュール管理ツール等々,特別支援に活用できるアプリや機能が満載です。でも唐突にやらざるを得なかったオンライン授業では,失敗もたくさん経験しました。私の指示や説明などそっちのけで全ての機能を試しまくる子,自室に逃げ込み画面に姿を現さない子,またある子は機嫌を損ねてブチっと接続を切ってしまい,私一人が画面に取り残されたことも……。考えてみれば,新しい家電を購入したとき,まず全てのボタンを押して確認したいタイプと,積極的QAに触りたがらないタイプがいますよね。先生も子どもも,事前に機器や機能でたっぷり「遊ぶ」時間をとり,慣れ親しんでおくことをお勧めします。 もう一つ大事なことは,「学習の主導権を子どもに渡す覚悟」です。GIGAスクール構想が目ざすのは,多様な児童の個別最適化,学びの転換。児童が自分のやり方・ペースで学ぶ環境を整えることが教師の仕事になるでしょう。一人一台端末を手にした児童を前に,「はい,教科書を開いて」「はい,先生の話を聞いて」的な一斉指導は成立しないことを肝に銘じ,今から意識を変える必要がありそうです。16はるえ先生のお悩み相談連載
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