「小学教科通信」2021年5月号
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(2019)年6月「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」において,海外の事例を引用しつつ,1台あたり300ドル以下という安価なクラウドベースの端末の活用が有力な選択肢として示されました。つまり,これまでに学校現場で整備されていた端末1台分の費用で3台まかなえるのではないか,そうすると「一人一台」が実現できるのではないか,という新しい道筋が見えました。そして令和元年12月,GIGAスクール構想を含む「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」が閣議決定されたのです。 このような経緯を考えれば,GIGAスクール構想では,Society5.0への対応や,個別最適化学習にふさわしい環境づくりなどがあげられているものの,その本質は,新学習指導要領のいっそう高度な実現であると考えることができるといえます。 令和3年1月の中央教育審議会答申(「令和の日本型学校教育」の構築を目指して)においても,「新学習指導要領の着実な実施」と示されています。そのアプローチの方法として「ICT活用」「個別最適な学び」「協働的な学び」等があるのだと整理すると,わかりやすいでしょう。 実践するにあたり,GIGAスクール構想では,どのような特徴をもつICT環境が整備されるのかを知る必要があるでしょう。2.成功のカギは「クラウドをいかに活用するか」コンピュータは,多くのケースで1台4.5万円ほどの端末が整備されました。ソフトウェアも含めてこの価格です。ふだんの感覚で使おうとすれば,起動するだけで時間がかかり,動作が遅すぎて授業にならないと思うかもしれません。 以前,文部科学省の担当者がGIGAスクール構想について講演した際,「GIGAスクール:全く新しいICT環境」と見出しのついた資料が提示されていました。これまでも学校のICT環境整備の動きはあったかと思いますが,今回は「全く新しい」と考えることが必要です。何が新しいかといえば,「クラウド」を活用することが「全く新しい」のです。 クラウドの活用を前提に,安価なコンピュータが整備されていますので,これまでのICT活用イメージと全く発想が異なることが多くあります。もう進化のしようがないと思っていたワープロソフトですらクラウド型になり,共同編集など活用のイメージが変化して,驚きと新鮮さを与えています。私自身も,クラウド活用が始まってから研究スピードが上がりました。導入される端末のOS(オペレーティングシステム:コンピュータ全体を制御して使いやすくするシステム)はどうなるでしょうか。全国1,512の教育委員会への調査結果(MM総研 2021年1月)によれば,Google Chrome OSが43.8%,iPadOSが28.2%,Microsoft Windowsが28.1%と,わずかな差とはいえ,これまで100%近かったWindowsが最下位となっています。実際には,各OS上でどのクラウドサービスを活用するかが重要になります3デジタル時代の学びのカタチー提言特集

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