「小学教科通信」2021年5月号
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 さらに先を見据えて,「主体的・対話的で深い学びに,ICTをどうやって生かすのだろう」といった点に興味がある先生も多いと思います。しかし少なくとも,ここまで書いてきたことができるようになるだけでも,かなりの時間がかかるでしょうから,今回はこのあたりまでとしたいと思います。 先生がたも直感的に感じられるとおり,GIGAスクール構想でICT環境の差は小さくなりますが,依然として活用レベルの差は大きくあります。つまり,これまでのICT環境の差は,先生がたや子どもたちの活用の差,マインドの差も生んでいたのです。モノを買って揃えることに比べたら,活用やマインドの差を埋めることはいっそう困難です。環境が同じ水準になっても,先進地域と同じ実践ができないのは,何年もかけ,ICT環境や制度を整え,先生や子どものスキルを磨き,徐々に経験を積み重ねてきた地域と,それを行わなかった地域との差なのです。例えるならば,GIGA実践の家を建てようとしたら,スキルの岩やマインドの岩など,地盤から多くの岩を取り除く必要が出てくるようなイメージです(図3)。先進地域はこうした岩がすでに除去された状態なので,GIGA実践がすぐにうまくい7.さらなる活用に向けて図3 ICT活用に向けた地盤改良は済んでいない?  GIGA実践の家を建てたい 最近の演奏家は,タブレット端末にあらゆる楽譜を保存し,必要に応じてすぐに呼び出して演奏を楽しむそうです。端末と無線でつながったフットペダルで譜めくりもできるので,両手を使うギターやウクレレでも演奏しやすいとか。これで演奏力が向上するかといえば,直接的な影響は少なそうです。しかし,演奏家にとって「ラクで便利」だから活用が進むのです。学校でも,こういうイメージで活用していくことが重要だと思います。くのです。これからの地域は,これらの岩を一つ一つ丁寧に取り除いていく必要があります。 もう一つ,重要な問題があります。旧来の活用法や運用法にとらわれて,クラウドの優れた特徴を次々と利用禁止にしている地域もあるのです。そうした地域では,新しいことに取り組もうとする先生がたのワクワク感すらも,どんどんしぼんでいます。アイディアは現場の実践にあります。「全く新しい」動きなのですから,ICTの技術に詳しいだけで充分に活用したことのない人には,将来の展望まで見通せるわけがありません。ICT活用の普及とは,ICT技術に堪能である人が起こすのではなく,ICTに慣れた人が起こすのだと痛感しています。例えば自動車もそうで,詳しい仕組みや技術に堪能でなくても,多くの人が日常的に上手に活用しています。むしろ技術に堪能なかたが乗っている車を見て「ふだん使いにはちょっと……」と感じることがあるでしょう。これと同様に,ICTに堪能なかたがたのアドバイスが「ふだんの授業ではちょっと……」ということになっていないか,バランスに気をつけていく必要があるでしょう。GIGAGIGAマインドICT環境習熟度制度モラルスキル7デジタル時代の学びのカタチー提言特集

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