2−2 リアルタイムでデータを共有する 中2地学での放射性同位体の学習に関連して,100個のサイコロを用いて半減期を考える実習を4人班で行いました。実習内容は高校教科書にも記載のあるもの(例えば啓林館(平成29年)『地学 改訂版』)で,100個のサイコロのうち,1の目(あるいは1と6の目)が出たものを取り出していきます。1回サイコロを振るごとにOneDrive上のExcelファイルに各班の計測データを入力してもらい,10班合図2 「気温実習」の生徒提出レポート例 デジタル機器は,本稿で紹介したような新たな実習の試みに寄与しただけでなく,各授業での感想シートや課題の提出,小テスト実施などにおいても役立っています。オンライン授業の際には映像配信も行いました。生徒はこのようなデジタル機器を用いた活動には概ね好意的,意欲的です。発想次第では,教員にとっての利便性向上にとどまらず,より生徒の主体的な学びを推し進める方向に,既存の学習の枠を広げる可能性も秘めているように感じています。教員間で実践例を共有,蓄積し,内容をブラッシュアップしていくことが肝要だと考えています。まとめ 紹介した実践はいずれも,佐々木勇人氏,高橋由佳氏と共に行ったり,両氏から助言を得ながら行ったりしたものです。両氏に心より感謝申し上げます。謝辞 前項で示した実践例はここ1,2年で初めて行ったもので,いずれも課題が多く残りました。「月実習」では,アプリの精度の問題で,月と背景の星を同時に写すことが難しく,結果的にタイムラプス機能を用いた班が多く見られました。アプリの選定も精査する必要があります。いずれにしても地球の自転を利用する場合,月と地球の位置関係や,月の公転を考慮して考察するのが難しく,難易度を下げる必要がありそうです。「貝殻実習」では,相対成長式を求めて終わるのではなく,他の種と比較するなどして,もう一歩考察を深められるとよいと感じました。「気温実習」では,データを取った後に考察の方針を考えましたが,大量のデータのどこに着目すればよいか戸惑う班が多く,やはり,予め考察の見通しを持った上で,適した時期や項目で観測した方がよいのではないかと感じました。ただ,似たようなテーマ設定をした班同士でデータ共有し,データ数を増やすことについては今後も活用できそうです。課題と改善点計1000個のサイコロが次第に減っていく様子を共有しました。Excelファイルは教室の白板にも映写しておいたので,進捗状況を楽しみながら実習できたようです。さらに,その場で教員がデータをグラフ化し,半減期の考察につなげることができました。❶観測期間は9月中旬からの2週間。学校がない日は6時〜21時までの3時間ごと,学校がある日は6,19,20,21時に観測する。❷集まったデータと,これまでの学習事項や天気図,気象衛星画像なども参考にしながら,各班でテーマを設定する。❸班ごとにデータを整理・分析してグラフや表などを作成した上で,各自レポートにまとめる。11デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 理科特集
元のページ ../index.html#11