学校現場のICT環境整備が急ピッチで進んでいます。令和3年度が始まり,各学校では端末を“実際に触っていく・使っていく”という実践の一歩を踏み出したところかと思います。生徒も教師も,まずはICT端末に慣れ,文房具の一つとして活用していきたいですね。 さて,音楽科の学習指導ではどのような活用方法が考えられるでしょうか。中学2年生を想定した実践例をご紹介します。 テレビCMやゲームなど,生徒の生活の中でよく耳にする“テーマソング”を導入の話題とし,「登場人物の雰囲気やイメージを音で表すことについて考える」という活動をしていくことを伝えます。その上で,①「STAR WARS」から『帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)』,②「ドラえもん」から『スネ夫が自慢話をするときに流れている曲』を紹介します。キャラクターの性格やイメージをそれぞれの音楽と照らし合わせ,その工夫を感じ取ります。その後,交響組曲「シェエラザード」の第1楽章冒頭を提示し,楽曲と出合わせます。「千一夜物語」のあらすじを紹介し,“シャリアール王の主題”と“シェエラザードの主題”を取り上げ,それらの特徴を感じ取った上で第1楽章を鑑賞します。 第2時では,“カランダール王子の主題”に焦点を当てます。前時に扱った二つの主題と表現方法を比較しながら,旋律の動きや楽器の音色と曲想との関わりに着目し,第2楽章全体を鑑賞します。第1時第2時 音楽における主題の存在に視点を置きながら楽曲を鑑賞した上で,創作活動に進みます。使用端末はiPad,使用アプリケーションは「GarageBand」です。その機能の中でメインとして使うのは,「KEYBOARD」の中の「Alchemyシンセ」です。内蔵されている豊富な音源資料の中から,“自分をイメージした音色”を仲間と共に探します。「自分はとっても優しいから柔らかい音がいいかな」「もう少しはっきりした感じでしょ」「こっちの激しい音色の方が合っているんじゃない?」そのような会話が飛び交います。 前時に探した音色を用いた旋律の創作に入ります。創作するにあたって参考にするのは,第1次の鑑賞で取り上げた楽曲の各主題です。「シェエラザード」からは“シェエラザードの主題”と“カランダール王子の主題”,「STAR WARS」からは“帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)”第1時第2時 「“My Theme”をつくって聴き合おう」 題材全体を,鑑賞領域として配列した第1次(前半2時間)と表現領域として配列した第2次(後半4時間)とで構成します。 第1次では,主題の働きに視点を置いて音楽を味わうことをねらいとし,旋律や音色と曲想との関わりに着目しながら,交響組曲「シェエラザード」(リムスキー・コルサコフ)を主教材とした学習指導を行います。 第2次では,前段階での鑑賞を踏まえ,“自分自身をイメージした主題”の創作を行います。 各時間の学習課題は次のとおりです。題材名概要GIGAスクール構想の実現に向けた音楽科の学習指導例宮城教育大学附属中学校教諭 板いた橋ばし 薫かおる はじめに第1次(鑑賞)の学習指導について第2次(表現)の学習指導について題材名及び概要第1次:鑑賞主題の変化を感じ取り,オーケストラの豊かな表現を味わおう(全2時間)1登場人物の雰囲気やイメージを表す旋律には,どのような工夫があるだろうか。2主題の変化を感じ取りながら,オーケストラの豊かな表現を聴き取ろう。第2次:表現(創作)リズムや音色を工夫しながら,“My Theme”をつくって聴き合おう(全4時間)1“自分をイメージした音色”を探そう。2リズムや音高を変化させながら,旋律をつくろう。3仲間の作品を参考にしながら,自分の旋律に工夫を加えよう。4“My Theme”を聴き合い,表現の工夫を感じ取ろう。 12デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 音楽特集
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