「中学教科通信」2021年5月号 ウェブ版
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 GIGAスクール構想により,2021年4月から生徒が一人一台のタブレットPCを持つことになりました。ここでは,中学校の英語の授業において,今までの授業の中にタブレットPCをどう取り入れ,共存させていくかについて考えていきます。私は,これまでの授業の形を大きく崩さず「マイナーチェンジ」で共存させたいと考えています。この考え方にもとづき,授業でどのようにタブレットPCを使うかを,実践例として紹介します。 現在,私は教科書の1つの課を2時間で教えています。以下の指導過程の中のハイライトの部分で,タブレットPCを使っていきたいと考えています。 1時間目(❶)の「チャット」は,1つのトピックについて1分間から2分間,ペアで自由に話す活動です。これまでは,自分の発話内容を振り返ることが難しい,という課題がありました。ICレコーダーで録音して振り返る方法もありますが,タブレットPCを使えば,より容易に自分の発話を録音することができます。また,Wordの音声入力を使えば自分の発話を文字に起こすことができ,英文の間違いや,「次に話すときはここでこんな質問を入れたい」といったことが振り返りやすくなるでしょう。 1時間目(❼)のまとめは,これまでは板書を書き写させる時間にあてていました。しかし,タブレットPCを使えば,生徒が板書をカメラで撮ったり,教師が板書のデータを送ったりすることで,時間を短縮することができます。この時間を,次の授業の準備などにあてることができるようになるのです。例えば,教科書『ONE WORLD English Course 2』のLesson6では,姫路城と熊本城について書かれていますが,「次の時間に姫路城か熊本城について説明してもらうから,説明したい方のお城について調べておいて」と指示を出しておけば,生徒はこの時間を使って,インターネットで調べることができます。 また,授業後の家庭学習でも,教科書に載っているQRコードを活用して,教科書本文の音声を聞いたり,音読練習をしたりできるため,復習がしやすくなります。 2時間目(❺)の本文の活用,(❻)の発表では,これまでは下の写真のように,教科書のピクチャーカードを使った発表などを行わせてきました。しかし,タブレットPCを活用すれば,生徒が自分で調べ,準備した画像を使って発表することができ,発表の幅が広がります。ただし,生徒は翻訳サイトを使って理解した,周りの生徒にはわからない英語を使ってしまうこともあるので,注意が必要です。 他にも,PowerPointを使った発表(スピーキング)や,Wordを使ったライティングなど,さまざまな活動が考えられます。しかし,授業時間の大半がPCを使う時間にあてられ,英語の指導内容が薄くなってしまっては本末転倒です。英語の授業はPCの授業ではないということに留意し,タブレットPCに振り回されない英語の授業をつくりたいものです。「一人一台端末」を有効活用するために品川区立鈴ケ森中学校主任教諭 太おお田た 裕ひろ也や これまでは教師が準備した画像を使い,発表をさせていた。授業はあくまで「マイナーチェンジ」1つの課の実践例英語がメインだということを忘れない1時間目(導入の時間)2時間目(復習の時間)帯活動(チャット)新出文法の導入本文内容の導入黙読及び説明新出語句の発音本文の音読まとめ帯活動(Dictation)新出文法の復習本文内容のQ&A黙読及び説明音読,本文の活用発表まとめ❶❷❸❹❺❻❼❶❷❸❹❺❻❼14デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 英語特集

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