船橋市では小中学校の各教室(一部の小学校1・2年生を除く)に,タッチパネル式の電子黒板が設置されています。また,実物投影機も各教室に備え付けられているために,紙の資料を拡大して提示することができるほか,書写の授業で指導者の手元を映して見せることも可能となっています。そしてGIGAスクール構想の実施に伴って,令和2年度末から本校では生徒1人につきChromebookが1台ずつ導入されました。 こうしたICT機器や端末の整備が行われている一方で,それを授業にどう生かしていけばよいかは各教科担当に任されています。指導者がICT活用に対して積極的であるか否か,機器の扱いが得意であるかどうかにより,二極化が進みかねない状況があります。特に国語科においては教科の特性もあり,その傾向が顕著であると言ってよいでしょう。 現在まで積み重ねてきた授業実践の中にICT教育を入れる余地を考える,ということでは指導者側の負担も増え,混乱も避けられません。導入に向けては,指導者にとって効率的であり,生徒にとって効果的である方向性を目ざしていくのがよいでしょう。評価にかかる時間を短縮し,生徒個々の力を伸ばすことを目ざしたアイディアをいくつか提示したいと思います。 生徒同士の対話的な授業を目ざす際,これまでも課題としてあげられていたことがあります。一つは討論や話し合いの形式を取ったときに,テーマに対する考えはもっているのに引っ込み思案になってしまう生徒がいるということです。もう一つは発言をせず,また何も考えずに話し合いの場にいるだけの生徒がいるということです。両者を表舞台に引っぱり出す方法がなければ,対話的な授業で得られるものは少ないと言わざるを得ません。また,教室内で小グループを作ると話し合いが同時に行われるため,その時間の生徒個々の活動をどう評価するかについても課題は残ります。 これらを踏まえ,ロイロノート・スクールを活用して話し合いを行う実践例を紹介します。実践名「辞書の編集者になろう」概 要❶クラスを4~5人のグループに分け,それぞれに辞書の見出し語を割り当てます。たとえば全グループに定義が人によって分かれる「平和」を割り当てたり,それぞれの意味の違いがわかるように全グループに「恋」と「愛」を割り当てたりすると,興味をもって進めることができます。❷割り当てられた見出し語の意味と用例を個々の生徒が考えてロイロノートのカードに書き込みます。この時,カードに生徒各自の色を割り当てておくと評価の際に便利です。❸各グループのリーダーは,メンバーのカードを横に並べて意見を共有します。 ❹それぞれのカードの下に,書いた意味や用例の良い点やわかりにくい点,付け加えなどをカードにして貼っていき,グループごとに総括してわかりやすい語釈を作ります。 この実践では話し合いの内容と経過が可視化されます。指導者の端末から各グループの話し合いの様子を確認できるため授業中に助言しやすく,どの生徒が意見を出したかわかるため授業後に評価をする際にも効率的です。 私は中学2年生を担当すると,「レモン哀歌」(平成28年度版まで収録教材)を扱うのと前後して,授業ごとに1篇ずつの詩を生徒に読ませています。生徒の反応も良く,難解な表現を含む作品も含めて数多くの詩にあたることで,自ら問いを立てて読む姿勢が身につくからです。 以前までは現代詩の中から生徒に読ませたい作品をピックアップしてプリントを作成し,毎回の授業で配布し,朗読するという手順をとっていました。しかし,生徒に1台ずつの端末があることによって,作品提示や鑑賞文を書かせることについても効率が大幅に上がりました。以下に具体的な方法をまとめます。国語科におけるICT機器の活用について船橋市立海神中学校教諭 石いし井い 唯ゆいはじめに読む力をつけるためのICT活用話し合いやプレゼンテーション作りのアイディア2デジタル時代の学びのカタチー教科の視点 国語特集
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